日本大百科全書(ニッポニカ) 「食品取引」の意味・わかりやすい解説
食品取引
しょくひんとりひき
food transaction
食品流通に関する諸取引を総称して食品取引という。食品取引の内容は、食品の性格によって決まる。食品は生鮮食品と加工食品に二大分されるが、取引の点からは、これらの中間に保存性食品を設けたほうがよい。
生鮮食品の特色は、腐敗しやすく長期の保存に耐えないこと、鮮度が生命であること、生産地に制限があること、種類が多いこと、季節性があるだけでなく日々の出荷量も不安定なことなどにある。これらの特色に対応して、中央卸売市場のような特殊な取引機関が必要になる。その条件は、交通便利で冷蔵・冷凍設備をもち、大量の生鮮食品の敏速な集荷と分散を可能にするスペースの中で、多数の売り手と買い手を集中して公正な価格を形成することである。
保存性食品は、穀物食品のように保存性が高く加工度の低い食品をいう。大量取引に適するが、季節性や天候によって生産量が左右され、また日本の場合には輸入依存度が高いものが多く、ほとんどは加工食品の原料となる。このような特色に対応する取引機関は商品取引所である。日本の場合、大豆、小豆(あずき)、トウモロコシ、コーヒー豆、粗糖、精糖、冷凍エビなどが商品取引所で取引されている。加工食品の取引は、加工度の高低により事情が異なる。加工度の低いもの(例、豆腐)は生産者から直接小売商へのように流通経路が短く、加工度の高いもの(例、冷凍食品)は通常問屋・卸売商・小売商のような多段階の経路によって流通する。
[森本三男]