首実検(読み)クビジッケン

デジタル大辞泉 「首実検」の意味・読み・例文・類語

くび‐じっけん【首実検】

[名](スル)
昔、討ち取った敵の首を持ち帰り、首の主を大将検分したこと。また、面識者に首の主を確かめさせたこと。また、その儀式
実際に見せたり会わせたりして、当人であるかどうかを確かめること。

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精選版 日本国語大辞典 「首実検」の意味・読み・例文・類語

くび‐じっけん【首実検】

  1. 〘 名詞 〙
  2. 討ち取った首がその者の首であるかどうかを確かめること。また、その儀式。
    1. [初出の実例]「首実検の後、義朝に給はって孝養すべきよし、仰せ下されければ」(出典:保元物語(1220頃か)上)
  3. 実際に会ったり見たりして、その者かどうかを確かめること。
    1. [初出の実例]「番頭は首じっけんをしてまはり」(出典:雑俳・柳多留拾遺(1801)巻一九)

首実検の語誌

( 1 )朝敵や反逆者の首級がさらされることは、すでに平安時代に行なわれており、「陸奥話記」には貞任らの首の入洛に際し、かつての従者が髻(もとどり)を洗い梳(くしけず)ったとの記事も見える。
( 2 )実際に、「首実検」の名目が定式化されたのは鎌倉期からである。これは通常大将が行なうが、特に首が敵方の大将、貴人の場合には対面と称した。首は実検に先立ち、首化粧が施されたが、これは女性の仕事とされたらしく、「おあむ物語」や「軍用記」には、その方法が詳しく記されている。

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改訂新版 世界大百科事典 「首実検」の意味・わかりやすい解説

首実検 (くびじっけん)

陣中で敵の首級を検ずること。軍陣作法の一つ。本来,勝者の戦意高揚と分捕高名のねぎらいの意味で行われたものであったが,室町期以降,さまざまな作法を記した諸書が登場し,しだいに儀式化された。朝敵や反逆者の首級がさらされることはすでに平安時代からあったが,首実検の名目が定式化されたのは鎌倉期からである。《吾妻鏡》建久1年(1190)3月10日条には大河兼任の首実検のことがみえる。首実検は通常大将が行うが,これを首対面と称した。これに先立ち各首級には面に粉が施され,いわゆる首化粧が行われる。これは,おもに女性の仕事とされたらしく,《おあむ物語》や《軍用記》には首化粧の方法がこまごまと記されている。それによれば,髪は水でしめし櫛を入れ,髻(もとどり)に札を付し,その後,討取者が左手で髻をとり,右手で台を持ち将の検知を得るというものであった。ちなみに,首級の証拠書類を首注文,首級を載せる台を首台または首板と称し,これを納めるものを首桶といった。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「首実検」の意味・わかりやすい解説

首実検
くびじっけん

討取った敵の首を,本物かどうか大将みずから検査したことをいう。首実検のことが史料にみえるのは,平安時代末期からといわれ,室町時代になるとその作法ができあがってきて,江戸時代には故実家によって細かな手続,作法がつくられた。それは伊勢貞丈著『軍用記』 (『故実叢書所収) などによって知ることができる。

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世界大百科事典(旧版)内の首実検の言及

【実検】より

…(1)朝廷の儀式で必要な人物,場所,器物などを確認すること。(2)武家で合戦の際,大将,主人が部下の取った敵の首級を検分することで,《日葡辞書》はこの意味のみを載せる(首実検)。また戦功の上申で負傷の申立てがあったとき,使節を派して確認すること(疵実検)。…

※「首実検」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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