日本大百科全書(ニッポニカ) 「首飾り事件」の意味・わかりやすい解説
首飾り事件
くびかざりじけん
Affaire du Collier フランス語
1785年フランスに起こった詐欺事件。王妃マリ・アントアネットを巻き添えにしたので有名。王妃は利用されただけであるが、不評の種を世間にまいた。首謀者はド・ラ・モット夫人とよぶ、バロア王朝の末裔(まつえい)にあたるが文無しのしたたか者で、被害者は名門出の大司教ド・ロアンである。詐欺師の夫人は、ド・ロアンが王妃に取り入りたいと熱願している弱みにつけこみ、ベルサイユ宮殿の庭で暗闇(くらやみ)を利用し、にせの王妃と逢引(あいびき)させて信用させ、宝石商から160万リーブルの高価なダイヤの首飾りをド・ロアンに買わせ、マリ・アントアネットに献上すると称して巧みに横領した。85年8月、宝石商への支払いの期日がきて、不正が発覚したものの、王妃がド・ロアンをパリ高等法院へ告訴したため、騒ぎが広まった。しかもド・ロアンは無罪を宣告され、王妃の体面はまるつぶれとなった。
[金澤 誠]