日本大百科全書(ニッポニカ) 「冷え症」の意味・わかりやすい解説
冷え症
ひえしょう
身体の特定部位だけがとくに冷たく感ずる場合をいい、いわゆる「冷え」と同義である。原因としては循環障害、代謝機能の低下、自律神経失調などが考えられる。また冷え方にもいろいろあり、下半身が冷えるもの、夏でも足袋(たび)をはくほど足が冷えるもの、頭だけが冷えるもの、背部や腹部が冷えるもの、氷を当てられたように腰が冷えるもの、膝(ひざ)から下は水に浸っているようで顔はほてっているものなど、さまざまな訴えがある。したがって、冷え症は冷えの症候群とみた病名ともいえる。また、日本女性に特有の症状として、冷える性分あるいは体質という面からとらえて冷え性と書く場合もある。
冷え症の患者には自律神経の不安定なものが多く、自律神経機能の失調が血管運動神経を障害し、冷たく感ずる部位の毛細管がれん縮して血行を妨げ、そのために冷たく感じるものとみられている。男性より女性が2倍ほど多く、とくに40歳以上の女性にみられるところから卵巣機能の失調に注目するむきもある。また、情動障害を伴った心因性のものもみられる。
治療としては運動と栄養が効果的で、冷えない程度の保温に留意し、入浴や乾布摩擦、あるいは就寝前の少量の飲酒などもよい。また東洋医学的療法、すなわち漢方薬や鍼灸(しんきゅう)治療も行われる。なお、ひどい場合は膠原(こうげん)病などによることもあるので、診療を受けるのが望ましい。
[柳下徳雄]