語源は未詳で、歴史的かなづかいも明らかではない。
ショウガ科の多年草。香辛料として世界的に知られている。起源は古く,インド原産とされているが,野生種は発見されていない。熱帯域が原産地であるので,高温多湿を好み,日本では7月から9月ごろにかけてよく生育する。草丈は60~90cmになり,地下茎は順次短縮した分枝を派生し,それぞれから直立した茎葉を茂らせる。生育するにつれて個々の茎葉の基部の地下茎が肥大し,節くれだった形状となる。地下茎は多肉で黄色を呈し,繊維質で芳香と辛みがある。葉は2列に互生し,葉身は長さ15~30cm,幅3cm程度で細長く先がとがる。葉鞘(ようしよう)は鞘(さや)状で相互に重なり,茎状の構造を形成する。暖地ではまれに地下茎から花茎を伸ばし,頂部に花穂をつけるが結実はしない。
ショウガは東南アジアから東アジア温暖域で古くから栽培されていた。ヨーロッパでも1世紀のころから薬用として知られており,その後香辛料としての利用が広まり,13~14世紀にはその利用が一般的となったが,栽培はきわめて少ない。新大陸には16世紀の初めにスペイン人がジャマイカに移植し,ヨーロッパやアメリカに大量に輸出されるまでになった。日本への伝来の年代は明らかでないが,平安朝時代に栽培されたことは《延喜式》に記されている。また品種が区別して記載されるようになったのは19世紀になってからといわれている。
また日本で栽培されているショウガの品種は大別して大ショウガ,中ショウガ,小ショウガの3群に分類される。大ショウガは生育旺盛で大株となり,地下茎の肥大もよく,収量も多い。おもに漬物や菓子用に使われる。中ショウガは生育は中位で,分げつもやや少ない。葉ショウガや漬物に適する。小ショウガは早生で,茎は細く草丈は低いが分げつが多い。芽ショウガや葉ショウガなどの促成栽培用に使われる。繁殖には地下茎を分割した種ショウガを用い,栽培は耕土が深く排水と保水性のよい土壌が適する。千葉・埼玉・長崎県などに栽培が多い。漬物,薬味,菓子用のほか薬用,ソースなどの調味用やジンジャー・エールの製造などに使われる。
執筆者:平岡 達也
ショウガの根茎を生薬では生姜(しようきよう)という。精油を含み,独特の芳香がある。主成分はジンギベロールzingiberolで,ほかにセスキテルペン,モノテルペン,辛味成分として結晶性のジンゲロンzingerone,油性のショウガオールshogaolなどを含む。
他の生薬と配合して芳香性健胃,食欲増進,新陳代謝機能促進,鎮嘔,鼻詰り,悪寒発熱に用いられる。消炎鎮痛作用があり,姜汁(きようじゆう)とサトイモの親芋をつきつぶしたものと小麦粉を混ぜ,関節痛,肋間神経痛などに外用する。また食物の毒(肉類,魚類など)および薬毒(半夏(はんげ),天南星(てんなんしよう)などの)を除く。東南アジアではショウガに近縁な2~3種のショウガ属植物が利用されている。
執筆者:新田 あや
古くから重要な香味野菜で,《和名抄》は香味野菜の総称として〈薑蒜類〉の語を用い,〈生薑〉の和名を〈くれのはじかみ〉,あるいは〈あなはじかみ〉,〈乾薑〉を〈ほしはじかみ〉としている。そののち,本来はサンショウ(山椒)を指したと思われる〈はじかみ〉の名を占有するようになり,現在も葉つきショウガや,それを酢にひたした酢どりショウガをはじかみと呼ぶ。根ショウガと葉つきショウガにわけられる。根ショウガは土ショウガともいい,古いものをひねショウガと呼ぶ。おろしたり刻んだりして薬味,吸口などに広く用い,薄切りにしたものは梅酢につけて紅ショウガにするほか,甘酢につけたものをすしに添え,あるいはそのまま砂糖漬にしたり,魚や肉の煮物に加えたりする。葉つきショウガは谷中ショウガとも呼ばれ,そのまま,あるいは焼いてみそをつけて食べる。また,酢どりショウガにして焼物などのあしらいにするが,これは葉の付け根にあるアントシアン系の色素が酢によって発色するため紅色を呈している。中国料理では魚や肉の料理に多く用い,西洋料理では乾燥して粉末にしたものを料理や菓子に使う。
執筆者:松本 仲子
熱帯を中心に分布する多年草で,約45属700種からなる単子葉植物。とくに東南アジアからマレーシア域で多くの種属が分化し,香辛料,薬用,観賞用などに利用される有用植物を多く含む。大多数は地下茎を有する草本で,葉鞘(ようしよう)が巻き重なった偽茎に葉を2列に互生するが,コスツス(オオホザキアヤメ)類では,葉は地上生の茎にらせん状につく。葉鞘の上端部にイネ科に見られるような葉舌が分化している。花は偽茎の上端,途中や基部,あるいは全然別の位置から出る円錐状や総状あるいは頭状の花序につき,左右相称形で,花被片は外側の3枚の萼片と内側の3枚の花弁に分化している。稔性のあるおしべは1本,不稔おしべは弁化して唇弁と呼ばれる花弁状のものになる。子房は下位,多数の胚珠をいれる。カンナ科,クズウコン科,バショウ科などに近縁。
香辛料としてカレーに使われるウコン類をはじめショウガ,シュクシャなどがある。これらは薬用にも多用されるし,若芽や花序を野菜として食用にすることも多い(芽ショウガ,ミョウガ)。コスツス類,ショウガ類,シュクシャ類,ゲットウ類などは花や花序,それに常緑性の葉も観賞するため,熱帯域では広く栽植されている。
執筆者:堀田 満
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
ショウガ科(APG分類:ショウガ科)の多年草。ハジカミ(薑)ともいう。地下茎を食用とする。茎は地中にあり、節くれだって肥大し、塊茎となる。節から地上に伸び出る茎状のものは、鱗片(りんぺん)状の葉や葉鞘(ようしょう)部が重なった偽茎で、上部に普通の葉を互生し、高さ50~90センチメートルになる。葉身は先のとがった細長い楕円(だえん)形で、長さ15~30センチメートル、温帯では花をつけることはまれであるが、熱帯や亜熱帯では花が咲く。地下茎から高さ20センチメートルほどの花茎を出し、その先に短い穂状花序をつける。一般に種子はできない。原産地はインドを中心とした熱帯アジアと推定されているが、野生種は発見されていない。古い時代に中国に伝わり、3世紀以前に日本にも渡来したらしい。
ショウガの塊茎には特有の香りと辛味があり、利用面も多いが種子ができず、塊茎で増殖するので品種の分化は比較的に少ない。塊茎の大きさによって小ショウガ、中ショウガ、大ショウガの3群に分けられ、小ショウガには谷中(やなか)や金時(きんとき)など、中ショウガには三州(さんしゅう)や近江(おうみ)ショウガなどの品種がある。小ショウガと中ショウガの品種は、日本で栽培され、分化したものである。大ショウガは江戸時代以後に渡来したと考えられ、印度(インド)生姜、広東(カントン)生姜などの品種がある。また、利用面から根ショウガ、葉ショウガ、芽ショウガなどにも分けられる。根ショウガは、秋にとった塊茎を貯蔵して随時出荷するもので、薬味や香辛料、漬物などに利用され、干しショウガにもされる。葉ショウガは、植え付けた塊茎から伸びた偽茎に、葉が3~4枚開いた状態で出荷するが、新しい地下茎が肥大し始めたころで、生食に適している。葉ショウガを栽培するのに利用した種ショウガは辛味が強く、老成(ひね)ショウガとよばれて薬味に利用する。芽ショウガは、光を遮って育てたもので、軟化ショウガともよばれ、柔らかく、紅色で美しいので和食の付け合せに最適である。
[星川清親 2019年6月18日]
漢方では新鮮な根茎を生姜(しょうきょう)といい、薬とする。八百屋で老成生姜または古根(ふるね)と称しているものがそれで、健胃、利尿、鎮嘔(ちんおう)、鎮咳(ちんがい)、発汗剤として感冒、慢性胃腸炎、慢性気管支炎、嘔吐、つわり等の治療に用いる。乾燥したものを乾生姜(かんしょうきょう)または乾姜(かんきょう)といい、辛味が非常に強いので、体の冷え、腹痛、下痢、新陳代謝機能の衰え等の治療に用いる。民間では生姜をおろして液汁をとり、砂糖と温湯を加えて感冒と咳(せき)に用いる。
[長沢元夫 2019年6月18日]
日本に渡来したもっとも古い野菜の一つで、3世紀の『魏志倭人伝(ぎしわじんでん)』に薑(きょう)の名で載る。中国では有史前から栽培され、乾かした乾薑(かんきょう)や生の生薑(しょうきょう)が薬に使われた。ショウガの名は生薑を呉音で読んだショウカウに由来したとされる。室町時代にはタイの刺身に酢漬けのショウガを添え、江戸時代の天保(てんぽう)(1830~1844)のころから京都や大坂で梅酢漬けの紅しょうがが組み合わされた。ショウガのジンゲロン、ショウガオール、ジンゲロールなどの辛味成分は殺菌作用があり、なま物にショウガを添える庶民の知恵は、科学的にも裏づけられる。ショウガは魔除(まよ)けになるとの俗信もあり、東京の芝大神宮(しばだいじんぐう)、鹿児島市の多賀神社(たがじんじゃ)など各地の神社で、秋にしょうが市(いち)が立つ。
[湯浅浩史 2019年6月18日]
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…ショウガZingiber officinale Rosc.の根茎にはジンギベレーンzingiberene,ジンギベロールzingiberolなどの芳香性の揮発油と,ジンゲロンzingerone,ショウガオールshogaolなどの辛味成分が含まれるので,ジンジャーの名のもとに,香辛料や芳香性健胃薬,またジンジャー・エールなどの清涼飲料に広く用いられる。さらにショウガと同じような芳香辛味成分を有するものも,ジンジャーと呼ばれる。…
…ショウガZingiber officinale Rosc.の根茎にはジンギベレーンzingiberene,ジンギベロールzingiberolなどの芳香性の揮発油と,ジンゲロンzingerone,ショウガオールshogaolなどの辛味成分が含まれるので,ジンジャーの名のもとに,香辛料や芳香性健胃薬,またジンジャー・エールなどの清涼飲料に広く用いられる。さらにショウガと同じような芳香辛味成分を有するものも,ジンジャーと呼ばれる。…
…ホットペッパーの名のごとく,口の中が焼けるような辛味を強調する料理によく使われ,生臭さを抑えたり,魚やエビの料理に効果的で肉料理にも使用する。 薑ショウガ。新ショウガ(子姜)は肉といためたり漬物にする。…
※「しょうが」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
〘 名詞 〙 年の暮れに、その年の仕事を終えること。また、その日。《 季語・冬 》[初出の実例]「けふは大晦日(つごもり)一年中の仕事納(オサ)め」(出典:浄瑠璃・新版歌祭文(お染久松)(1780)油...
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