日本大百科全書(ニッポニカ) 「馮文炳」の意味・わかりやすい解説
馮文炳
ふうぶんぺい / フォンウェンピン
(1900―1967)
中国の小説家。筆名廃名。湖北の人。周作人(しゅうさくじん)門下に兪平伯(ゆへいはく)と異才を競い、縹渺(ひょうびょう)とした悲哀を玄妙な散文に託して、新文学の一角に独得の叙情的領域を確保した。『竹林の物語』(1925)以下数冊の短編集と詩若干、田園情緒豊かな長編『橋』(1932)、および哀愁のドン・キホーテとでも評すべき自伝的長編『莫須有(モオシュヨウ)先生伝』(1932)を遺(のこ)して文壇を遠ざかったが、抗日戦中の郷里での農村生活に立脚し、形式・思想ともに大胆な反近代主義的転換を示した『莫須有先生飛行機に乗って以後』(1949)を知る人は少ない。人民共和国では吉林(きつりん)大学教授の職にあった。
[木山英雄]