日本大百科全書(ニッポニカ) 「高山動物」の意味・わかりやすい解説
高山動物
こうざんどうぶつ
高山帯をおもな生活場所としている動物の総称で、高山植物に対する語である。高山帯は、低温、強風などの厳しい気候条件により高木の林が成立しない森林限界以上の地域をいい、日本では本州中部の2500メートル以上、北海道の大雪(たいせつ)山では1500メートル以上の地域がこれにあたる。寒帯に相当する厳しい気候条件のうえに、生息環境が比較的単純なため、そこに生息する動物は、植物以上に種類が限られ、個体数も少ない。高山鳥と高山昆虫が代表的である。
狭義には高山帯で繁殖している鳥類を高山鳥という。本州では、ライチョウ、イワヒバリ、カヤクグリの3種、北海道ではカヤクグリ、ギンザンマシコの2種がこれにあたる。高山帯ではこのほかに、ホシガラス、メボソムシクイ、ルリビタキ、アマツバメ、イヌワシなどもみかける。これらは亜高山帯や山地帯でおもに繁殖する鳥であるが、広義には高山鳥に含めている。冬も高山にとどまっているライチョウは、雪や氷を掻(か)いて餌(えさ)をとるのに適した鋭いつめや嘴(くちばし)、足指の先まで生えた羽毛をもつ。また、雪穴を掘って眠るといった習性や、冬は白、夏は白、黒、茶の斑(まだら)模様に衣替えする保護色が発達しているなど、高山帯の環境へのさまざまな適応がみられる。日本のライチョウは、氷河が北に去ったのち、高山に取り残された高山遺跡個体群である。ヨーロッパの高山には、キバシガラスやカベバシリが、ヒマラヤにはニジキジ、ベニキジなどが生息する。
日本で代表的な高山昆虫は、タカネヒカゲ、ミヤマモンキチョウなどのチョウ類、アルプスギンウワバ、アルプスカバナミシャクなどのガ類、タカネヒラタハバチなどのハバチ類、ロエフクロバエなどのハエ類、オンタケナガチビゴミムシなどの甲虫類である。
[中村浩志]