アマツバメ(読み)あまつばめ(英語表記)swift

翻訳|swift

日本大百科全書(ニッポニカ) 「アマツバメ」の意味・わかりやすい解説

アマツバメ
あまつばめ / 雨燕
swift

鳥綱アマツバメアマツバメ科の鳥の1種で、また、広義にはアマツバメ科の鳥の総称。種としてのアマツバメApus pacificusは一見ツバメに似ているが、翼が著しく長い。全長約20センチメートル。全体に黒褐色で、のどと腰は白いが暗色の軸斑(じくはん)があり、腹には白色の横斑がある。口は大きいが、嘴(くちばし)は非常に小さく、足は短い。つめは鋭く、足指全部が前を向き、枝に止まることはできず、岩壁などにつめをかけて垂直にぶら下がって止まる。東部アジアに分布し、北のものは渡り鳥で、冬にはオーストラリアまで渡る。日本には夏鳥として渡来し、全国各地の山地の岩壁や海岸の洞穴などで繁殖する。

 アマツバメ科Apodidaeは約9属70種の鳥を含み、世界的に分布するが、熱帯地方に多い。北半球の高緯度地方で繁殖するものは、すべて熱帯地方や南半球で越冬する。どの種も翼が非常に長く、足はきわめて短い。空中生活に高度に適応していて、休息するとき以外は飛び続け、餌(えさ)をとるのも、水を飲むのも、ときには交尾や睡眠も飛びながら行う。ただし、交尾や睡眠は巣でするのが普通である。飛ぶ速度は鳥類中でもっとも速く、大形のハリオアマツバメは時速100キロメートル(全速では300キロメートルに達する)で飛ぶといわれている。食物は空中に浮遊している各種の昆虫類やクモなどである。羽毛や空中に舞い上がった植物片を唾液(だえき)で固めて、椀(わん)形や壺(つぼ)形の巣を岩壁のすきまや洞穴の天井や建物の壁などにつくるが、樹洞に営巣するものも少なくない。ヤシアマツバメCypsiurus parvusはヤシの葉の裏側に巣をつくり、卵は唾液で巣に張り付ける。唾腺(だせん)は、一般に非常によく発達している。1腹の卵数は1~6個。雌雄とも抱卵、育雛(いくすう)に従事する。日本には、アマツバメと、ハリオアマツバメChaetura caudacutaおよびヒメアマツバメA. affinisが分布する。ハリオアマツバメは大形種で、尾羽の先端から針のような羽軸が突き出ている。本州中部以北で繁殖する。ヒメアマツバメは小形種で、本州中部以南の気候の温暖な地方に留鳥として生息し、人家に営巣するが、数は少ない。

 アマツバメ類は、アマツバメ科のほかに、カンムリアマツバメ科Hemiprocnidaeを含む。

[森岡弘之]


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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「アマツバメ」の意味・わかりやすい解説

アマツバメ
Apus pacificus; pacific swift

アマツバメ目アマツバメ科。全長 17~18cm。背面は黒く,腰は白色で,腹面は黒褐色。は非常に長く,広げたときに鎌形をしている。飛翔力に優れ,ツバメよりもたいてい高空で昆虫類をとる。繁殖地はヒマラヤ山脈周辺と,カザフスタンからロシア南部,カムチャツカ半島東アジアに及ぶ。非繁殖期は東南アジアニューギニア島オーストラリアに渡る(→渡り鳥)。日本では夏鳥で,北海道から九州地方の高山や海岸の崖地の岩の割れ目の奥に営巣する。アマツバメ科 Apodidaeの鳥は著しく空中生活に適応,進化している。ツバメと違って草や電線などに留まることはなく,高空を飛び回るか,鋭い爪で垂直の壁面にとりついて休む。食べ物も巣材も空中でとる。おもに熱帯から温帯に分布し,北方で繁殖する種は,食物の少ない秋から冬の間は南方に渡る。日本にはアマツバメ,ハリオアマツバメヒメアマツバメの 3種が分布している。

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