日本大百科全書(ニッポニカ) 「高度順化」の意味・わかりやすい解説
高度順化
こうどじゅんか
人体の環境適応機能の一つ。馴化とも書く。高度が高くなると、気圧の低下に伴う酸素分圧の減少により、呼吸による酸素の吸収が少なくなり、頭痛、めまい、倦怠(けんたい)、動悸(どうき)、息切れ、睡眠障害、さらにチアノーゼ、呼吸困難などいわゆる高山病の状態になる。このような症状のおこり方は人によって差はあるが、高度2000メートルを超えると軽くおこり始め、3000メートルを超えると強くなる。しかし、高所に2週間以上滞在していると、症状はしだいに消えてくる。これは、低酸素環境に対する体の適応機能が働くことによる。すなわち、骨髄の造血機能が高まり、ヘモグロビン、赤血球が増加し、また循環機能、呼吸機能の向上により体の酸素運搬能力がよくなる。組織の細胞でも酸化還元に関係する酵素の活性が高まり、酸素の利用効率がよくなる。高所滞在による、このような低酸素に対する生活の適応現象を高度順化(アルティチュード・アクライマティゼーション)とよんでいるが、順化のおこり方は年齢や体力で異なる。オリンピック・メキシコ大会などを契機として、スポーツ医学においてもこの現象への関心を深めている。陸上競技や水泳競技などでも、循環器系の能力向上を目的に高地トレーニングが行われるようになった。
[黒田善雄]