日本大百科全書(ニッポニカ) 「高行健」の意味・わかりやすい解説
高行健
こうこうけん / ガオシンジェン
(1940― )
中国出身のフランス国籍の作家。江西省生まれ。1962年に北京(ペキン)外国語学院フランス語科卒業。文化大革命中は紅衛兵運動に参加したことがあると本人が後に告白している。その後、農村に下放され、安徽(あんき)省で中学校の教師などを経験。1974年に北京に戻り、翻訳の仕事をしながら執筆活動を開始し、小説やエッセイを次々と発表し作家として注目された。1981年に中国を代表する劇団、北京人民芸術劇院の専属劇作家となり、外国劇の手法を大胆に取り入れた劇『非常信号』(中国語原題『絶対信号』)『野人』などが大きな反響をよんだが、保守派からは批判された。1987年にフランスに移住し、1989年に北京で民主化運動を弾圧した天安門事件が起きると、中国政府を批判する声明を発表し、政治亡命の道を選んだ。1998年にフランス国籍を取得。中国国内を舞台にした自伝的小説が多く、中国語で発表した『霊山』『ある男の聖書』などが評価され、2000年に華人として初めてノーベル文学賞を受賞した。中国当局は「受賞は政治的理由だった」としてノーベル賞選考委員会を批判した。高行健の作品は中国国内でしばらく発禁処分を受けていたが、その後解禁されている。
[矢板明夫]