京都市高雄山神護寺(じんごじ)に伝来する現存最古の両界曼荼羅。彩色本ではなく赤紫綾(あや)地に良質の金銀泥(でい)で描かれている。国宝で、胎蔵界は446.4センチメートル×406.3センチメートル、金剛界は411.0センチメートル×366.5センチメートルある大幅。制作の手本となったものは空海が中国から請来(しょうらい)した根本(こんぽん)曼荼羅の彩色本(長安の宮廷画家李真(りしん)ら作)。帰朝後に破損したので、821年(弘仁12)図絵された転写本をさらに写したのが本図。尊容の鉄線描は優れ、とくに中台八葉院や持明(じみょう)院の運筆は唐時代の図像を的確に伝えている。制作時期については、高田修は、『実録帳』から、空海が高雄山寺(現在の神護寺)に居住していたおり、灌頂(かんじょう)堂で血縁灌頂など行うために829年(天長6)につくられたと推定している。本図は仁和(にんな)寺、蓮華王(れんげおう)院、高野山(こうやさん)を転々とした悲運な時期もあったが、文覚上人(もんがくしょうにん)の神護寺再興時1184年(元暦1)に返納された。1034年(長元7)高野山の成蓮房兼意(じょうれんぼうけんい)が模写したもの(自描)などがある。
[真鍋俊照]
…大阪府河内長野市観心寺の如意輪観音像(国宝)に酷似する。絵画では現存曼荼羅中最古でしかも空海在世時の唯一の作例である《両界曼荼羅図(高雄曼荼羅)》(平安時代),《釈迦如来像》(同),藤原隆信の筆とされ大和絵肖像画の白眉である《源頼朝・平重盛・藤原光能像》(鎌倉時代),平安後期に流行した大和絵屛風の姿を伝える《山水屛風(せんずいびようぶ)》(鎌倉時代),書跡では前述の《灌頂歴名》のほか藤原忠親筆《文覚四十五箇条起請文》(鎌倉時代)がいずれも国宝に指定されており,他にも寺宝は多い。【谷 直樹】。…
…観心寺如意輪観音像の表現はその両者の調和の上にあるといってよく,多臂の超人間的な形姿を巧みにまとめて密教像独特の神秘的な雰囲気を最高度に示している。 密教の根本教義を造形化した両界曼荼羅はいうまでもなく空海が唐から将来したものがその基本となるわけであるが,その絹本彩色の画幅は早くに傷み,現存最古のものは神護寺が蔵する綾本金銀泥絵の一本(《高雄曼荼羅》)である。これは829‐834年(天長年間の後半)淳和天皇発願により空海が描かせたと考えられるもので,その強靱な描線であらわす格調高い像容は,いま見ることのまれな本格的な唐代密教画の趣致を伝えている。…
…元禄本の大曼荼羅は,現在なお東寺の灌頂堂において用いられている。一方,天長年間(824‐834)に新造された高雄神護寺灌頂堂のために作られた《両界曼荼羅》(《高雄曼荼羅》とも。紫綾金銀泥絵,神護寺)は現存する最古の現図曼荼羅である。…
※「高雄曼荼羅」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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