外部から襲ってくる魔物を退散させること。もっとも一般的な方法は、家の門口(かどぐち)に神仏の御札(おふだ)を掲げることである。そのほか各地に多くみられるものに、イワシの頭、蹄鉄(ていてつ)、ハチの巣、花火の殻、ニンニク、ヒイラギの小枝などがあり、門口の御守りとされている。変わったものでは、東京の郊外などにもみられた「鎮西(ちんぜい)八郎為朝(ためとも)御宿」と書いた札を家の入口に貼(は)っておき、風邪(かぜ)の予防とした。また、「蘇民将来(そみんしょうらい)之子孫」と書いた木片を護符とする例もある。ほかに地方的な特色のあるものとして、岡山県真庭(まにわ)郡中和(ちゅうか)村では、旧暦12月8日日本海沿岸に打ち上げられたハリセンボンという魚を、入口の鴨居(かもい)に吊(つ)るすという。鳥取県南東部(八頭(やず)郡を中心とした地域)では、家の入口に四十鰒(ふぐ)を「始終福」といって吊るし魔除けにする。岡山県総社(そうじゃ)市では、小児の着物の背に小猿の形代(かたしろ)を縫って背負わせて魔除けにする。背守(せまも)りは他地方でもみられる風習である。兵庫県西宮(にしのみや)市では、門口にアカメバルという魚を掲げ百日咳(ぜき)除けのまじないとする。また、シャクナゲの葉はトベラの木と同じく戸口に吊るしておくと魔除けになるとされている。兵庫県下では、12月1日に「カラスの仲間」といって、カラスより先に起きナスの漬物を食べると、水難にあうことはないという。この風習は、期日を異にして他所にもある。以上は個人の家での魔除けであるが、村全体の魔除けとして、村の入口に縄を張り、それに大きな草履(ぞうり)を下げ流行病の侵入を防ぐまじないとすることがある。
[大藤時彦]
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