社寺で出す守札。神符(《運歩色葉集》),御守(《神道名目類聚抄》),守札,札守などとも呼ばれる。護符の一種。《神道名目類聚抄》に〈御札ハ某社ノ神号守護ノ由ヲ書ス〉とあるように,木または紙に各社寺の神名,仏名あるいは本地仏の種子(しゆじ)や図などを筆書または印刷し,これを配布した。中世では〈急急如律令〉という文言を神符に記すことが多かった(《下学集》)。御札は配布されるまえに神前,仏前において祈禱がなされる。その祈りが御札にこもり,それを受けた家や人々を災厄から守ると信ぜられ,また御札はそれを出す社寺の分霊とも考えられていた。配布を受けた御札は各家の神棚に安置されるが,火防,厄除けの御札などは門口にはられることもある。中世に熊野をはじめ各社寺で出した牛玉(王)(ごおう)宝印の御札は起請文の料紙として広く用いられた。御札は各社寺の説く現世利益により福徳延命,婚姻愛敬,安産,疫病除け,穢(けがれ)除け,虫除け,魔除け,雷除け,火難除け,水難除け,盗難除けなど各種のものが出現した。こうした機能の分化によって御札は家よりも個人の幸福を守るものとなり,各人が御札を身につける守袋もあらわれるようになった。
→御守 →護符
執筆者:西垣 晴次
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
神社や寺院で頒布する護符(ごふ)の一種で、神棚や仏壇に納めたり、門口や柱などに取り付けて神仏の加護を願うもの。火難、虫除(よ)けから開運、家内安全を祈るものまで多種にわたる。御札は、祈祷(きとう)のための読経の回数を書き付けた巻数(かんず)が、そのもとであるといわれている。神に一夜の宿を提供したので、子孫に災いがなかったという神話に由来する、「蘇民(そみん)将来之子孫也」という御札をはる地域も広い。中世以降、紀伊の熊野神社の御師(おし)をはじめ、有力な社寺の御師や先達(せんだつ)が全国を回って御札を広め、その効用を説いた。ことに神札は、御神体として扱われるほどのものになっている。節分時によく目にするヤイカガシや竹の先に籠(かご)をつけて立てたメカゴ、村境に注連縄(しめなわ)を張って大草鞋(わらじ)をつるした辻(つじ)切り、玄関口に針千本という棘(とげ)のある魚や蜂(はち)の巣をつけた門守りなどは、悪霊除けとして伝えられた伝統的な風習であるが、しだいにその役目を御札に譲りつつある。
[佐々木勝]
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