千葉県南東部、夷隅郡(いすみぐん)にある町。1914年(大正3)町制施行。1955年(昭和30)布施(ふせ)村、浪花(なみはな)村の各一部と合併。外房(そとぼう)海岸に位置し、町名は北条時頼(ときより)の詠んだ「御宿せしその時よりと人問はば網代(あじろ)の海と夕影の松」にちなんでつけられた。JR外房線と国道128号が通る。江戸時代には六斎市(ろくさいいち)の市場町として発達。網代湾には御宿港と岩和田(いわわだ)港があり、イカ、カツオなどの沖合漁業が盛んで、また海女(あま)によるアワビ、サザエ、イセエビなどの漁獲もある。湾央に砂浜海岸が広がり絶好の海水浴場となっていて南房総国定公園に指定されており、民宿や旅館などが多く立地して、外房有数の観光地を形成している。詩人・加藤まさをの作品『月の沙漠』の詩想の地といわれる御宿海岸には月の沙漠記念像があり、隣接して加藤まさををはじめとした御宿にゆかりのある作家の作品等を紹介した月の沙漠記念館がある。また1609年(慶長14)スペインのフィリピン総督ドン・ロドリゴほか乗組員300余名が救助された地(県指定史跡)でもあり、メキシコ記念公園には、「メキシコ塔」とよばれる、日本・スペイン・メキシコ三国交通発祥記念之碑がある。内陸の丘陵上では県の夷隅開発事業により、別荘地やゴルフ場なども開発され、漁業と観光の町として発展している。面積24.85平方キロメートル(境界一部未定)、人口6874(2020)。
[山村順次]
『『御宿町の歴史と地理』(1978・御宿町)』
千葉県南部,夷隅(いすみ)郡の町。人口7738(2010)。太平洋に面し,町域には房総丘陵の末端が広がる。古くから漁業が盛んで,《延喜式》に記された東鰒はこの地のアワビのことといわれ,江戸時代にはのしアワビが幕府に献上されている。また市場町でもあり,2・7の六斎市が開かれていた。磯浜の岩和田では現在も海女の潜水漁業が行われ,アワビ,サザエ,イセエビなどがとれる。遠浅の網代湾は海水浴場としてにぎわい,御宿には旅館,民宿が多い。網代湾はその風光美でも知られ,童謡《月の砂漠》はこの海岸砂丘をモデルにしたといわれる。1609年(慶長14)に御宿海岸に漂着したスペイン人ビベロを救助したことを記念して〈日西墨交通発祥記念碑〉が岩和田に建てられ,メキシコ記念公園もつくられている。JR外房線が通じる。
執筆者:千葉 立也
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