推理作家。本名中川透。東京生まれ。満州(中国東北)の札蘭屯(ジャラントン)中学校卒業。1950年(昭和25)本名で『ペトロフ事件』を『別冊宝石』に発表して推理文壇に登場し、1956年、書き下し長編『黒いトランク』から鮎川哲也をペンネームとした。『黒い白鳥』『憎悪の化石』の2長編で1959年度の日本探偵作家クラブ賞(現、日本推理作家協会賞)を受賞。上記4作を含め、『人それを情死と呼ぶ』(1961)、『死のある風景』(1965)、『戌神(いぬがみ)はなにを見たか』(1976)、『死びとの座』(1982)などは、探偵の鬼貫(おにつら)警部が登場する「鬼貫物」である。探偵「星影龍三」が登場するのが『リラ荘事件』(1956)、『白の恐怖』(1959)、『朱の絶筆』(1976)などで、クロフツ流のアリバイ・トリックを探求する本格派の推理作家として知られた。ミステリー以外に、エッセイ集なども著している。当時の推理文壇の裏面を知ることのできるインタビューなどで構成された『幻の探偵作家を求めて』(1985)、推理小説に関するエッセイ集『本格ミステリーを楽しむ法』(1986)、唱歌の作詞・作曲家を訪ね歩く『唱歌のふるさと 花』(1992)、『同 旅愁』(1993)、『同 うみ』(1995)などがある。1990年(平成2)には、自身の名前を冠した本格ミステリーの新人登竜門「鮎川哲也賞」が創設され、自らも選考委員を務めた。2001年、本格ミステリー大賞・特別賞を、2002年には日本ミステリー文学大賞・特別賞を受賞した。
[厚木 淳]
『『鮎川哲也長編推理小説全集』全6巻(1975~1976・立風書房)』▽『『鮎川哲也短編推理小説全集』全6巻(1978~1979・立風書房)』▽『『幻の探偵作家を求めて』(1985・晶文社)』▽『『本格ミステリーを楽しむ法』(1986・晶文社)』▽『『こんな探偵小説が読みたい』(1992・晶文社)』▽『『唱歌のふるさと 花』『唱歌のふるさと 旅愁』『唱歌のふるさと うみ』(1992、1993、1995・音楽之友社)』▽『『黒いトランク』『黒い白鳥』『憎悪の化石』『ペトロフ事件』『人それを情死と呼ぶ』『死のある風景』『リラ荘事件』(角川文庫)』▽『『戌神はなにを見たか』『朱の絶筆』(講談社文庫)』▽『山村正夫著『わが懐旧的探偵作家論』(1996・双葉社)』▽『笠井潔著『探偵小説論1 氾濫の形式』(1998・東京創元社)』▽『芦辺拓・有栖川有栖・二階堂黎人編『鮎川哲也読本』(1998・原書房)』▽『三國隆三著『鮎川哲也の論理――本格推理ひとすじの鬼』(1999・展望社)』▽『相川司・青山栄編『J'sミステリーズ KING & QUEEN』(2002・荒地出版社)』▽『山前譲編『本格一筋六十年 想い出の鮎川哲也』(2002・東京創元社)』
昭和・平成期の推理作家
出典 日外アソシエーツ「20世紀日本人名事典」(2004年刊)20世紀日本人名事典について 情報
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
出典 日外アソシエーツ「367日誕生日大事典」367日誕生日大事典について 情報
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