旅愁(読み)リョシュウ

デジタル大辞泉 「旅愁」の意味・読み・例文・類語

りょ‐しゅう〔‐シウ〕【旅愁】

旅先で感じるわびしい思い。たびのうれい客愁かくしゅう
[類語]旅情旅心たびごころ客愁かくしゅう里心帰心

りょしゅう【旅愁】[書名]

横光利一小説。昭和12~21年(1937~46)発表未完パリを主要舞台として矢代と千鶴子との恋愛を軸に、東洋西洋伝統科学などの問題主題にした作品

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精選版 日本国語大辞典 「旅愁」の意味・読み・例文・類語

りょ‐しゅう‥シウ【旅愁】

  1. [ 1 ] 〘 名詞 〙 旅先でのものさびしさ。旅のうれい。客愁。
    1. [初出の実例]「抱膝独咲能蠲旅愁」(出典:万葉集(8C後)一八・四一三二右詞文)
    2. [その他の文献]〔杜甫‐暁望白帝城塩山詩〕
  2. [ 2 ] 小説。横光利一作。昭和一二~二一年(一九三七‐四六)発表。未完。パリへの船中で知り合った日本主義者矢代、西欧心酔者久慈、矢代の恋人のカトリック信者千鶴子などをめぐり、パリ、東京を舞台に、東洋と西洋、伝統と科学などの問題を主題として知識人の混迷と苦悶を描く。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「旅愁」の意味・わかりやすい解説

旅愁
りょしゅう

横光利一(りいち)後期の長編小説。未完。1937年(昭和12)4月から46年4月まで断続的に『東京日日新聞』『文学界』『文芸春秋』などに発表。全四編。単行本は改造社から刊行。建設会社調査部勤務の矢代耕一郎を主人公とし、友人の久慈と有閑階級の令嬢宇佐美千鶴子(ちずこ)を配し、パリ、チロルウィーンを舞台に、日本の運命を議論する一大ロマンとなっている。とくに人民戦線内閣樹立で沸き立つパリを中心に、いわゆる「東洋と西洋」の異和の感覚を根本に据え、伝統精神と科学精神、古神道(しんとう)とカトリックなど、当時の横光利一の作家的主題が集約された形で提出されている。昭和10年代の日本の歴史的動向をあまりにも引き込みすぎた結果、その同時代性ゆえに、未完の大作たらざるをえなかった。

[栗坪良樹]

『『定本横光利一全集8・9』(1982・河出書房新社)』

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改訂新版 世界大百科事典 「旅愁」の意味・わかりやすい解説

旅愁 (りょしゅう)

横光利一の長編小説。1937年から46年にかけて各紙誌に断続して連載され,作者の死によって未完。1936年横光が新聞社の特派員として渡欧した折の見聞に端を発した作。その年から翌年の日中戦争突入のころまでが全編の時代背景となっており,その前半はパリが主要舞台。〈歴史の実習かたがた近代文化の様相を視察〉に渡欧する矢代耕一郎は船中で宇佐美千鶴子と知り合い,いっしょにチロルへ旅に出たりもするが,この2人が帰国後,ようやく結納をかわすあたりまでが後半に描かれる。そこからは旅で出会った2人の恋愛小説とも読めるが,《旅愁》という標題にはヨーロッパに旅した東洋人,日本人が味わう〈愁い〉=〈憂い〉がこめられており,東洋対西洋,伝統対科学といった課題に取り組んだ思想小説の要素も多分に備えている。〈日本主義者〉の矢代に対して西欧心酔者の久慈が配されることによって,作者の東西文明論も展開され,《旅愁》10年にわたる晩年の心情が随所にうかがわれる。
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普及版 字通 「旅愁」の読み・字形・画数・意味

【旅愁】りよしゆう(しう)

旅のさびしさ。唐・王昌齢〔万歳楼〕詩 誰か登するに堪へん、雲烟の裏(うち) に向つてとして愁を發するに

字通「旅」の項目を見る

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百科事典マイペディア 「旅愁」の意味・わかりやすい解説

旅愁【りょしゅう】

横光利一の長編小説。1937年―1946年,《東京日日新聞》などに断続発表。渡欧する青年矢代耕一郎と宇佐美千鶴子の恋愛を中心に,東洋と西洋の相克,科学と伝統の問題など,当時の日本の知識人が直面した精神的苦悩を描く。作者の死によって未完に終わったが,横光文学の代表作とされる。

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「旅愁」の意味・わかりやすい解説

旅愁
りょしゅう

横光利一の長編小説。 1937~46年発表。二・二六事件から日中戦争勃発にかけてのファシズム台頭期を時代背景とし,知識青年の思想的動揺と彷徨を,複雑な人間関係の織りなす愛の形とともに描いている。東洋と西洋,古神道とカトリックの対決を探ろうとした野心的長編だが,作者の死によって未完に終った。

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デジタル大辞泉プラス 「旅愁」の解説

旅愁〔J-POP〕

日本のポピュラー音楽。歌は女性歌手、西崎みどり。1974年発売。作詞:片桐和子、作曲:平尾昌晃。テレビ朝日放送系で放送された時代劇、必殺シリーズ第4作目の「暗闇仕留人」の主題歌。

旅愁〔唱歌〕

日本の唱歌の題名。作曲:オードウェイ。訳詞:犬童球渓(いんどうきゅうけい)。発表年は1907年。2007年、文化庁と日本PTA全国協議会により「日本の歌百選」に選定された。

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