鶴山勾当(読み)つるやまこうとう

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「鶴山勾当」の意味・わかりやすい解説

鶴山勾当
つるやまこうとう

江戸時代の盲人地歌箏曲の演奏,作曲家。延享~宝暦 (1744~63) 頃活躍。大坂の島の内で行われていた繁太夫節を得意とし,その創始者である豊美繁太夫没後浄瑠璃としての伝承が絶えた繁太夫節を地歌のなかに「繁太夫物」として伝える基を開いた。のち江戸に出て吉原に住み,宝暦 12 (62) 年『泉曲集』を編集し,江戸に上方歌 58曲を紹介したが,そのなかに「繁太夫物」6曲が含まれる。そのうち『妹背秋草』『濡扇』は鶴山自身の作曲になり,このほかにも繁太夫物では『時雨の松』があり,三下り端歌『狸』 (作物とは別曲) ,『四つの袖』『糸の時雨』『里の風』『延べ鏡』『難波潟』や二上り端歌『正月 (まさづき) 』『清平調』『芥子ぐくり』『賤の床』『里の名残』『浪がへし』『閨の露』,本調子端歌『由縁 (ゆかり) の月』なども作曲,さらに一中節の『釣行灯 (つりあんどん) 』を改調したりして,歌木検校改革以前の端歌物を吉村検校とともに代表している。これらの諸作品は現在でもよく演奏され,地歌舞としても行われているものが多い。検校への昇官証拠はないが,『吉原雑話』に「鶴山ぶし宝暦の頃鶴山検校がかたり初めしよし二丁目名主西村佐兵衛武愁の音ありとて町内鶴山を禁ず」とあり,当時の流行のほどがうかがわれる。

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デジタル版 日本人名大辞典+Plus 「鶴山勾当」の解説

鶴山勾当 つるやまこうとう

?-? 江戸時代中期の地歌三味線家。
大坂で浄瑠璃(じょうるり)の繁太夫節を地歌にとりいれる。江戸にでて宝暦12年(1762)「泉曲集」を編集した。吉原では歌がかなしすぎると鶴山節を禁じたという。代表作に「妹背の秋草」「濡扇」「正月(まさづき)」など。

出典 講談社デジタル版 日本人名大辞典+Plusについて 情報 | 凡例

世界大百科事典(旧版)内の鶴山勾当の言及

【繁太夫節】より

…繁太夫には後継者がなく一代で絶えたが,お座敷芸として上方の盲人音楽家が伝承し,繁太夫節は地歌に吸収された。初期の代表者は鶴山勾当で,《濡扇(ぬれおうぎ)》などの新作も作り,宝暦(1751‐64)ごろ江戸に下って〈鶴山節〉として吉原で流行させた。しかしこれは曲調が哀愁すぎるというので禁止されたと伝える。…

【狸】より

…(1)地歌の曲名 別名《小夜時雨(さよしぐれ)》。堺屋方舟作詞,鶴山勾当作曲の端歌。三下り。…

※「鶴山勾当」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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