麦角病(読み)ばっかくびょう

精選版 日本国語大辞典 「麦角病」の意味・読み・例文・類語

ばっかく‐びょうバクカクビャウ【麦角病】

  1. 〘 名詞 〙 麦類、特にライ麦に多い病気麦角菌寄生により、花穂を侵され、子房は次第にふくれ、ついには紫黒色角状の菌核、すなわち麦角となり結実しない。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「麦角病」の意味・わかりやすい解説

麦角病
ばっかくびょう

ライムギ、オオムギ、コムギおよびイネ科牧草のライグラス、チモシーなどの穂に発生する病気。穂の一部に正常な子実でなく、牛角状の黒い塊ができる。この塊を麦角というが、子嚢(しのう)菌類のバッカクキンが子実に寄生して生じた菌核である。この菌核(麦角)は土に落ちて土中で冬を越し、春に1センチメートル前後の小さなキノコをつくり、無数の子嚢胞子を放出する。この胞子が風や昆虫によって運ばれ穂に達し感染すると、そこから蜜滴(みつてき)を出す。蜜の中には病原菌の分生胞子が多数含まれていて、蜜をなめた昆虫が分生胞子を健全な穂に運び次々に感染、発病させる。麦角には、エルゴステロールが含まれており、古くから医薬として用いられているが、毒性が強く、多量に摂取すると中毒をおこす。麦角の混じった飼料家畜流産したり死んだ例もある。ライムギに発生しやすく、日本ではオオムギ、コムギにはほとんど発生しないが、牧草のイタリアンライグラスではかなり発生する。

[梶原敏宏]

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飼料作物病害図鑑 「麦角病」の解説

麦角病(ソルガム・スーダングラス)

家畜毒性が懸念されるソルガムの重要な糸状菌病。盛夏に蜜滴を穂から垂れ下がるように形成し、この中には多量の分生子が含まれ、これが風雨で飛散して花器感染を繰り返しまん延する。日本で発生する病原菌は二種あり、C. sorghicolaでは、秋口に牛の角状、表面白色かびに覆われ、その下は黒紫色、長さ0.5〜3cmの固い麦角を形成する。激発時はすべての穎花が麦角化する。C. africanaでは麦角は白く、柔らかく、あまり目立たない。C. sorghicolaは関東を中心に、C. africanaは九州を中心に発生する。

麦角病(リードカナリーグラス)

穂に麦角(菌核)を形成し、これが家畜毒性を持つ。開花直後から穂にあめ色の蜜滴を形成し始め、蜜滴内に含まれる多量の胞子が風雨で飛散して伝播する。感 染した穂には種子のかわりに表面白色、その下は黒紫色、牛の角状で、長さ2〜18mm、幅0.6〜2.4mmの麦角を形成する。麦角は地上に落ち、翌年に 発芽して伝染源となる。病原菌は寄主範囲が広く、オーチャードグラス、チモシー、フェスクなどにも感染する。麦角中のアルカロイドはエルゴバリンなど毒性 の強いものであり、家畜の流産などを引き起こす。

麦角病(ライムギ)

穂に麦角(菌核)を形成し、これが家畜毒性を持つ。開花直後から穂にあめ色の蜜滴を形成し始め、蜜滴内に含まれる多量の胞子が風雨で飛散して伝播する。感染した穂には種子のかわりに表面白色、その下は黒紫色、牛の角状で、長さ15〜25mm、幅2.5〜3.5mmの麦角を形成する。麦角は地上に落ち、翌年に発芽して伝染源となる。病原菌は寄主範囲が広く、オーチャードグラス、チモシー、フェスクなどにも感染する。麦角中のアルカロイドはエルゴバリンなど毒性の強いものであり、家畜の流産などを引き起こす。

麦角病(オーチャードグラス)

穂に麦角(菌核)を形成し、これが家畜毒性を持つ。開花直後から穂にあめ色の蜜滴を形成し始め、蜜滴内に含まれる多量の胞子が風雨で飛散して伝播する。感染した穂には種子のかわりに表面白色、その下は黒紫色、牛の角状で、長さ2〜18mm、幅0.6〜2.4mmの麦角を形成する。麦角は地上に落ち、翌年に発芽して伝染源となる。病原菌は寄主範囲が広く、オーチャードグラス、チモシー、フェスクなどにも感染する。麦角中のアルカロイドはエルゴバリンなど毒性の強いものであり、家畜の流産などを引き起こす。

麦角病(ライグラス)

穂に麦角(菌核)を形成し、これが家畜毒性を持つ。開花直後から穂にあめ色の蜜滴を形成し始め、蜜滴内に含まれる多量の胞子が風雨で飛散して伝播する。感染した穂には種子のかわりに表面白色、その下は黒紫色、牛の角状で、長さ2〜18mm、幅0.6〜2.4mmの麦角を形成する。麦角は地上に落ち、翌年に発芽して伝染源となる。病原菌は寄主範囲が広く、オーチャードグラス、チモシー、フェスクなどにも感染する。麦角中のアルカロイドはエルゴバリンなど毒性の強いものであり、家畜の流産などを引き起こす。

麦角病(フェスク)

穂に麦角(菌核)を形成し、これが家畜毒性を持つ。開花直後から穂にあめ色の蜜滴を形成し始め、蜜滴内に含まれる多量の胞子が風雨で飛散して伝播する。感染した穂には種子のかわりに表面白色、その下は黒紫色、牛の角状で、長さ2〜18mm、幅0.6〜2.4mmの麦角を形成する。麦角は地上に落ち、翌年に発芽して伝染源となる。病原菌は寄主範囲が広く、オーチャードグラス、チモシー、フェスクなどにも感染する。麦角中のアルカロイドはエルゴバリンなど毒性の強いものであり、家畜の流産などを引き起こす。

麦角病(チモシー)

穂に麦角(菌核)を形成し、これが家畜毒性を持つ。開花直後から穂にあめ色の蜜滴を形成し始め、蜜滴内に含まれる多量の胞子が風雨で飛散して伝播する。感染した穂には種子のかわりに表面白色、その下は黒紫色、牛の角状で、長さ2〜18mm、幅0.6〜2.4mmの麦角を形成する。麦角は地上に落ち、翌年に発芽して伝染源となる。病原菌は寄主範囲が広く、オーチャードグラス、フェスク、コムギなどにも感染する。麦角中のアルカロイドはエルゴバリンなど毒性の強いものであり、家畜の流産などを引き起こす。

麦角病 (ソルガム・スーダングラス)

アフリカ全土で発生する麦角病。病徴、菌の形態およびアルカロイド産生パターンから、九州で発生するソルガム麦角病(Sphacelia sorghi)の子のう時代と考えられる。蜜滴は初め透明だが、後に薄桃色からオレンジ色となり、その表面は多量の二次分生子で被われる。麦角は目立たず、あまり大型化しないが、含有するアルカロイド毒素の種類と量は多い。おもにソルガム雄性不稔系統に発生する。

麦角病(パスパルム)

穂に麦角(菌核)を形成し、これが家畜毒性を持つ。開花直後から穂にあめ色の蜜滴を形成し始め、蜜滴内に含まれる多量の胞子が風雨で飛散して伝播する。感 染した穂には種子のかわりに黒紫色の麦角を形成する。麦角は地上に落ち、翌年に発芽して伝染源となる。病原菌はパスパルム類にのみ寄生する。

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