日本大百科全書(ニッポニカ) 「エルゴステロール」の意味・わかりやすい解説
エルゴステロール
えるごすてろーる
ergosterol
酵母や麦角(ばっかく)(ライムギなどに寄生するバッカクキンの菌体ergot)をはじめシイタケなどの菌類に含まれるステロイド化合物で、エルゴステリンともいう。動物や植物には少量しか存在しない。クロロホルム、ベンゼンに溶け、アルコール、エーテルに難溶で、水には不溶である。日光にさらすと紫外線の作用で異性化をおこしビタミンD2(カルシフェロール)となるので、プロビタミンDとよばれる。動物の肝臓、とくにタラの肝油に含まれるデヒドロコレステロールもプロビタミンDの一種である。ビタミンDは普通、プロビタミンDの型で食物から取り入れ、日光浴などで紫外線を浴びてはじめてビタミンDとして働き、カルシウムの代謝や骨格の発達を促進する。紫外線による反応が進みすぎると生理的には無効な物質になってしまう。なおエルゴステロールは吸収されにくいのであらかじめ紫外線照射でビタミンD2に変えたのち摂取すると、より効果的である。
[菊池韶彦・菅野道廣・小泉惠子]