翻訳|ergot
コムギ,ライムギ,ペレニアルライグラス,ダリスグラス,カモジグサなど多くのイネ科植物の穂の部分に突出している固い舌状の褐色組織。麦角は菌核の一つで,バッカクキン(麦角菌)Claviceps purpureaなどクラビケプス属の子囊菌が寄生して小穂の中に菌糸がまんえんすると,子房の部分を肥大させて菌とともに白い軟質塊を形成する。これがしだいに堅く褐色になって菌核(長さ1~3cm,直径2~4cm)ができ上がる。菌核が肥大充実する前には外側に盛んに分生子を生じ,虫の媒介で新しい穂に発病を起こす。土中に落ちた菌核(麦角)からは発芽して子実体を生じ,子囊胞子が飛散して伝染源となる。多量の麦角を含む飼料を家畜に与えると,嘔吐,痙攣(けいれん)などの中毒を起こす。ウシはウマよりも弱い。
執筆者:寺中 理明
麦角はエルゴメトリンergometrine,エルゴタミンergotamine,エルゴトキシンergotoxineなどのアルカロイドを含む。これらは子宮とくに妊娠子宮を収縮させる作用がある。なかでもエルゴメトリンは他のものよりも作用が強く,速効性で,血圧上昇作用は弱く,交感神経遮断作用がないので,分娩第3期における子宮収縮剤として広く使われる。エルゴタミンおよびエルゴトキシンは子宮収縮作用のほかに末梢血管を収縮させる作用もあり,その結果,血圧の上昇が起こるので,子宮収縮の目的には適さないが,片頭痛に効果があるため,他の薬剤と配合してこの目的に多用される。またアルカロイドから誘導されるリゼルギン酸ジエチルアミド(LSD)はきわめて微量で幻覚を生じさせる作用があるため,精神科領域で大きく期待される薬物となった。
執筆者:新田 あや
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…たとえば,ゲンノショウコ,ドクダミ等は広く日本の民間で用いられているが,使用法は漢方の場合とまったく異なるので通常,漢方薬には含めず,民間薬として区分する。また,ウワウルシ,ゲンチアナ,ジギタリス,麦角等は西洋医学では古くから用いられてきた生薬であるが,漢方薬ではない。要するに後述するような漢方医学の理論にのっとって用いられる生薬が漢方薬である。…
…分娩の誘発または産後の子宮収縮・止血のために,子宮筋を収縮させる目的で用いられる薬物。脳下垂体後葉ホルモンと麦角アルカロイド製剤が用いられるが,最近になってプロスタグランジンも用いられるようになった。脳下垂体後葉ホルモンのうちオキシトシンは,9個のアミノ酸からなるペプチドで,子宮収縮作用が強く(似た構造をもつバソプレシンは血圧上昇作用および抗利尿作用が強い),陣痛の弱いときに分娩促進薬として繁用される。…
※「麦角」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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