マラリア、とくに熱帯熱マラリア感染の既往歴がある者、またはその経過中におこる危険な合併症で、ヘモグロビン尿熱ともいう。突然の悪寒戦慄(せんりつ)を伴う40~41℃の体温上昇に、頭痛、嘔吐(おうと)、下痢、背部痛が加わり、2~3時間後には暗赤色または黒色の尿を排出するが、これは血管内溶血に基づく血色素が尿中に溶出するためである。ついで、肝臓と脾(ひ)臓の急速な腫大(しゅだい)と黄疸(おうだん)、強度の貧血、肝不全、腎(じん)不全、循環虚脱を招き、重症例の多くは無尿状態に陥り、尿毒症症状が進行して死亡する。この血管内溶血の成因に関してはまだ十分に説明されていないが、少なくともマラリア原虫側の要因によるものではなく、冷気に暴露されたり、過労や抵抗力低下のほか、マラリアの治療として用いた不十分量のキニーネの不規則な内服が誘因になると考えられている。
[大友弘士]
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
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