鼓銅図録(読み)こどうずろく

日本大百科全書(ニッポニカ) 「鼓銅図録」の意味・わかりやすい解説

鼓銅図録
こどうずろく

江戸時代採鉱冶金(やきん)技術の代表的古典の一つ。大坂の住友銅吹所(どうふきしょ)(精錬所)を訪れる幕府やオランダ商館などの高官たちのための参観用案内書として、1804、1805年(文化1、2)ころ住友家が編集刊行した。住友の経営する別子銅山(べっしどうざん)と大坂銅吹所における採鉱、選鉱、排水、焼鉱、溶鉱(素吹(すぶき)、間吹(まぶき)、棹吹(さおぶき))や、銅鉛の吹合せ(吹銅(ふきどう))、銅鉛の吹分け(南蛮吹(なんばんぶき))、銀鉛の吹分け(灰吹(はいふき))などの諸工程、ならびに使用する精錬用諸道具が、27枚の絵図によってわかりやすく構成されている。作者は『諸国名所図会』を描いた丹羽元国(にわもとくに)。なお当時の吹所支配人増田綱が解説を書き、巻頭蜀山人(しょくさんじん)(大田南畝(なんぽ))の題字がある。今日の工場案内の先駆ともいえる日本鉱業史の貴重な文献である。

[飯田賢一]

『三枝博音編『復刻日本科学古典全集4』(1978・朝日新聞社)』

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改訂新版 世界大百科事典 「鼓銅図録」の意味・わかりやすい解説

鼓銅図録 (こどうずろく)

大坂の銅吹屋泉屋(住友氏)の家版の銀銅製錬の解説書。蜀山人(大田南畝)の題字を付すが,住友家資料により1804-05年(文化1-2)ころの初版と推定される。銅鉱採掘より南蛮吹による銀製錬まで,工程を十数段に分けて図示し,各図に和文の解説を加え,別に製錬用器具の説明図があり,最後に詳しい漢文の解説がある。図は丹羽桃渓,解説は泉屋傭人の増田綱の筆。吹所見学の幕府要人らへの説明贈呈用にあてたようで,必要に応じ20部ほどずつ刷った。
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百科事典マイペディア 「鼓銅図録」の意味・わかりやすい解説

鼓銅図録【こどうずろく】

江戸後期の銀銅製錬の解説書。大坂の銅吹屋泉屋(住友氏)の家版で,1804年―1805年(文化1年―2年)ころの初版とされている。銅の採掘と冶金の技術を示したもので,図解の部は丹羽桃渓が,記述の部(鼓銅録,原漢文)は泉屋傭人増田綱が担当

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