新聞記事(読み)しんぶんきじ

精選版 日本国語大辞典 「新聞記事」の意味・読み・例文・類語

しんぶん‐きじ【新聞記事】

  1. 〘 名詞 〙 新聞に掲載された記事。新聞の紙面に書かれていること。
    1. [初出の実例]「代助は斯ふ云ふ考で、新聞記事(シンブンキジ)に対しては別に驚きもしなかった」(出典:それから(1909)〈夏目漱石〉八)

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報 | 凡例

改訂新版 世界大百科事典 「新聞記事」の意味・わかりやすい解説

新聞記事 (しんぶんきじ)

新聞の紙面から広告,論説,コラムなどを除いた,ニュース報道,解説をさすが,その境界は明瞭ではなく,紙面全般の文章をさすことが多い。

17世紀ヨーロッパの初期の新聞は,公式報告書,布告,などの文体そのままか,街頭で呼売りをした一枚刷,バラッドなどの文体そのままの,著しく冗長で,あいまいな文章が多かった。新聞らしい文体の始まりは,ピューリタン革命期の戦況報道であるといわれる。具体的事実を最大限にもり込み,しかも簡潔に,できればおもしろく書く技法である。以降,新聞の歴史は,新しい記事の書き方,その定着普及,交代の歴史といってよく,新しいスタイルの創始者は,かならず新しい時代をつくってきた。その長い歴史のなかで公式化してくる新聞記事のスタイルは,まず基本要素〈5W1H〉といわれる〈いつ(When),だれが(Who),どこで(Where),なぜ(Why),なにを(What),どのように(How)〉をできるだけ短いセンテンスにまとめる。次にリードとよばれる前書きをつけ,そのあとに先にまとめたセンテンスと取材内容をもとに,〈事実〉を詳述する本文を流していく,逆三角形の形式である。しかし,〈なぜ〉というのが,全体の構造,個人の内面にかかわるとき,その解明は容易ではなく,多くは記者の推測,想像が混入することになってフィクション領域に近づいていく。アメリカのニュー・ジャーナリズム,調査報道investigative reportingなどは,そうした欠陥克服を一つの目標にして出発,流行した。しかし,多方面に調査,取材をつみ重ねても,万人が承認する〈真実〉はなかなか浮かび上がってこないことも多く,主観の混入を恐れず,話者の〈私〉を前面に押し出して書いた文章が,それだけで新しい視角を保障するものではない。現在,新聞の文章は,定型的パターンをゆるやかに解体しこれまで長い時間をかけて分離・独立させてきた,物語,小説,報告文,年代記などの混合した新聞発生当初の文体へ,別な次元でもどりつつあるようにみえる。

現今の新聞では,外国ニュースは何ページ(面),政治記事は何ページと,それぞれまとめられており,記事の項目分類といってもよいが,その分類は,政治部,経済部,学芸(文化)部といった新聞社の組織機構の分割と対応している。日本では,明治初期に多くの新聞が4ページだてのころ,人殺しゴシップスキャンダルなど市井の雑事は三面に集められていた。そこから,人生の過半を占める〈社会〉ニュースをやや軽べつのニュアンスをふくめて〈三面記事〉と称するようになった。エリート的意識の支配した初期のジャーナリストの世界では,天下国家を報道,論評する記者(硬派記者とよばれた)が本流とされ,市井の俗事を扱う記者(軟派記者とよばれた)は,数段低い存在とみなされていたからである。明治30年代前後から,報道新聞(〈言論新聞〉に対する)の優位が確立し,〈三面記事〉は,部数拡張の基盤として,社内的にも,読者との関係からも,優位性を確立していく。

 アメリカの教科書などで行われている記事分類によれば,記事はあらかじめスケジュールが決まっていて,事前に予想できる議会での演説,裁判などの記事(anticipated,diary news)と災害もふくめた突発事件(hot news)の記事とに大きく分類される。前者の場合,時間との競争である新聞事業の特性から,しばしば事前に想定にもとづいた原稿がつくられる。これを予定原稿という。記事を用意しておいても,現場での最終チェックが行われればよいが,それを怠ると多くの誤報(虚報・誤報)の原因となる。

 現代の事象は,風俗,思想,政治といった在来の枠には収まらず,各分野を横断して相互に関連し,全体として新しい文脈をつくっているものが多い。組織・記事分類の基本的な縦割り構造を変え,修正する試みはたえず行われているが,まだ新しい型の形成にはいたっていない。記事はそれぞれになにがしかの力,作用力を帯びており,その操作を図る動きも数多い。特定の集団,多くは政府が,ある政策を実行する前,それが実施された場合の世論の反応を探るため,政策の一部をニュースとして,あるいは政策が現実化しそうだといった予測,解説を意図的に新聞に出させることがある。元来,外交官の慣用手法で〈風見気球ballon d'essai(フランス語),observation balloon(英語)を揚げる〉といわれるが,そのメディアに新聞が使われた場合,そうした記事を総称して観測記事という。しかし,厳密にいえば,たとえば政治家,なにかの交渉当事者の〈これから〉についての発言には,そのことによって反応を測定し,有利な世論形成を促進しようという操作的意図,要素が多かれ少なかれ混入しており,観測記事はその凝結体とみてもよい。政府の言論操作が複雑巧妙になってきた今日,新聞記者はそれと自覚しないで〈気球〉を揚げるのを手伝わされる危険が増大している。

重要度にしたがって大きさの異なる見出しをつけ,紙面の向かって右上(横文字新聞は左上)をトップ・ニュースとして配列していくなどの構成は,19世紀後半にアメリカ,イギリスなど先進国でほぼ確立する。《タイムズ》などは伝統的に第1面を広告で埋め,第2次大戦後の〈現代化〉で変えるまでその構成を続け,アナクロニズムを一種のステータス・シンボルにするなど,外国紙の構成には,まだかなりの個性が残っている。日本の新聞は後発国として,居留地新聞などをモデルにしながらヨーロッパ,アメリカで形成された型をほぼそのまま輸入するところから始まった。明治の20年代には,現在まで続く構成法の原型ができ上がっている。部分的変更は数多く試みられ,第2次大戦前は構成を担当することで社内比重の高かった整理部の位置も変わるなど,変化も激しいが,その大枠は変わっていない。また記事配列のデザインは,メディア,読者の好みの多様化に応じて変わっていくであろう。
執筆者:

出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

デジタル大辞泉プラス 「新聞記事」の解説

新聞記事

古典落語の演目のひとつ。上方ばなし「阿弥陀ヶ池」の東京での別題。

出典 小学館デジタル大辞泉プラスについて 情報

今日のキーワード

仕事納

〘 名詞 〙 年の暮れに、その年の仕事を終えること。また、その日。《 季語・冬 》[初出の実例]「けふは大晦日(つごもり)一年中の仕事納(オサ)め」(出典:浄瑠璃・新版歌祭文(お染久松)(1780)油...

仕事納の用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android