日本大百科全書(ニッポニカ) 「2000年問題」の意味・わかりやすい解説
2000年問題
にせんねんもんだい
コンピュータ普及初期のメモリーが高価な時代には、使用メモリーをできるだけ少なくする工夫が望まれた。そのため、年月日を示すデータのうち西暦年号の上2桁を省略し下2桁だけを使うプログラムが多数つくられた。たとえば1995年を示すのに、95だけを使用するものとした。すると、このようなプログラムに対し2000年は下2桁の00となり、これは1900として計算されることになる。たとえば1990年から2002年までの12年間の利子計算をするとき、2002年の下2桁が02なので1902年とされてしまい、1902-1990=-88年となって、その結果、利子がマイナスとして計算されるおそれがある。このようなプログラムが修正されずに2000年以降も作動するとき、それによって引き起こされる問題を2000年問題という。Y2K(YはYear、Kはキロつまり千を意味)ともいう。
工場や交通機関、オフィスなど至る所に組み込まれたコンピュータの中にこのようなプログラムが忍んでいる可能性があるため、それがどのような害を引き起こすか予測しにくい。このような誤りを自動的に検出し修正するソフトウェアもつくられているが、最終的にはヒトの判断に頼らざるをえない。2000年になれば、当然このような事態になることはわかっていたのだから、そもそも単純なプログラムミスであったといってよい。しかし、現在の巨大なソフトウェアには2000年問題以外にも予期できないミスが潜んでいる可能性がある。2000年問題とはそのようなソフトウェアのバグ(誤り)が社会に大きな災厄を招く危険性をもっていることへの警鐘である。
実際に2000年になってみると、人命にかかわるような重大事故は発生せず、少なくとも公には報告されていない。企業やマス・メディアが過大に喧伝(けんでん)しすぎたともいわれるが、周到な対策によって、事故を未然に防げたとも考えられる。実際、韓国において、マンションの空調が止まり、900世帯が数時間にわたって暖房なしで過ごしたケースなど、対策もれによる事故例が多く報告されている。
[田村浩一郎]