知恵蔵 「2019年台風15号」の解説
2019年台風15号
台風15号は、8月30日にマーシャル諸島近海で熱帯低気圧として発生、西に進みながら9月5日南鳥島近海で中心付近の気圧1002ヘクトパスカル、最大風速18メートル(m/s)の台風となった。翌々日までは勢力はあまり変わらなかったが北西に進み、海水温の高い日本近海で勢力が一気に増し、8日夜には伊豆諸島・神津島周辺で955ヘクトパスカル、最大風速45メートルの「非常に強い」台風になった。その後、上陸時には960ヘクトパスカル、最大風速40メートルと、首都圏を直撃した台風としては過去最大級の「強い」勢力を保っていた。このため、倒木や電柱の倒壊などが相次ぎ、90万戸を超える広域停電が発生した。千葉県では1週間後にも7万戸以上で停電が続いた。日本損害保険協会によれば、台風15号による保険金支払額は数千億円に達する見通しで、過去ワースト10に入るレベルと見られる。気象庁は台風上陸に先だって緊急記者会見を行い最大限の警戒を呼び掛け、鉄道各社は計画運休を行うなどしたが、運転再開が遅れたり、高速道路の通行止めで成田空港が孤立状態になるなど、台風災害に対する首都圏の脆弱(ぜいじゃく)性が改めて露呈した。これに続いて台風19号が各地で洪水や土砂崩れ、河川決壊などの被害をもたらし地域を区切らない激甚災害および非常災害にも指定された。このような中で、インフラなどの台風災害への備えや各国語での情報提供、復旧の体制などについて見直しを迫る声も出ている。
(金谷俊秀 ライター/2019年)
出典 (株)朝日新聞出版発行「知恵蔵」知恵蔵について 情報