熱帯低気圧(読み)ネッタイテイキアツ

デジタル大辞泉 「熱帯低気圧」の意味・読み・例文・類語

ねったい‐ていきあつ【熱帯低気圧】

熱帯の海洋上で発生する低気圧等圧線円形を示し、前線を伴わない。発達したものは激しい暴風雨を伴い、日本付近では最大平均風速が秒速17.2メートル以上のものを台風という。熱低。→台風ハリケーンサイクロン
[類語]台風低気圧野分きハリケーン気圧高気圧温帯低気圧移動性高気圧気圧配置気圧の尾根気圧の谷西高東低南高北低圧力

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精選版 日本国語大辞典 「熱帯低気圧」の意味・読み・例文・類語

ねったい‐ていきあつ【熱帯低気圧】

  1. 〘 名詞 〙 熱帯の、主として海上に発生する低気圧。発達すると激しい暴風雨を伴うので、発生地域によって、台風、ハリケーン、サイクロン、ウィリ‐ウィリなどと呼ばれる。〔日本の気候(1948)〕

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「熱帯低気圧」の意味・わかりやすい解説

熱帯低気圧
ねったいていきあつ

広義には熱帯地方で発生する低気圧。狭義には最大風速が風力7以下の熱帯地方で発生する低気圧。最大風速が風力8以上(毎秒17.2メートル以上)の熱帯低気圧を日本では台風という。1952年(昭和27)以前は熱帯性低気圧と性の字を入れ、「弱い熱帯性低気圧」「強い熱帯性低気圧」「台風」と分けていたが、1953年からは、「強い熱帯性低気圧」「台風」を「台風」に、「弱い熱帯性低気圧」を「弱い熱帯低気圧」とした。1999年(平成11)8月14日に神奈川県玄倉(くろくら)川で水難事故が発生すると、「弱い」ということばが「大した影響がない」と誤解されるので防災上好ましくないとの指摘があり、気象庁は2000年(平成12)6月から「弱い熱帯低気圧」を「熱帯低気圧」へと表現を変えた。また同時に、台風の強さの「弱い」「並の強さ」、台風の大きさの「ごく小さい」「小型」「中型」の表現を廃止した。

 熱帯低気圧は温帯低気圧に比べ、
(1)等圧線が円形
(2)前線を伴わない
(3)エネルギーが主として水蒸気潜熱であるため発生・発達が熱帯の海洋上である
(4)直径は数百キロメートル程度とわりあい小さいが中心気圧は900ヘクトパスカル以下になることがある
(5)中心付近ではとくに風が強い
(6)中心部に目がある
などの特徴がある。最大風速によって分類され、このうちとくに強い風(風力12)を伴う熱帯低気圧は、発生地域によって、たとえば北太平洋西部ではタイフーンインド洋ではサイクロン、大西洋および北太平洋東部ではハリケーンというように名称が異なる。風力8以上の熱帯低気圧は世界中で1年間に80~90個発生しているが、このうち約3割が台風である。

饒村 曜]

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百科事典マイペディア 「熱帯低気圧」の意味・わかりやすい解説

熱帯低気圧【ねったいていきあつ】

熱帯地方のおもに海洋上に発生する低気圧。夏季に多く発生。猛烈な暴風雨を伴い,そのエネルギー源は主として水蒸気の潜熱である。海洋性熱帯気団または赤道気団内で発生し,等圧線は円形で前線をもたない。その中心付近では風が弱く天気のよい部分がありこれを眼という。発生海域により次の名称がついている。ハリケーン北大西洋,カリブ海,東経180°以東の北太平洋,南太平洋),台風(経度180°以西の北太平洋,南シナ海),サイクロン(南北インド洋,ベンガル湾,アラビア海),バギオフィリピン諸島を襲う台風の別名),ウィリー・ウィリー(オーストラリア近海)。ただしウィリー・ウィリーは熱帯低気圧というよりはトルネードに近い性格のものという説もある。南大西洋の熱帯海域は海水温が低いため熱帯低気圧の発生が極端に少ない。日本の気象通報では風力階級7以下,風速毎秒約17m未満のものを〈弱い熱帯低気圧〉,それより強いものを台風と呼んでいる。
→関連項目温帯低気圧低気圧

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「熱帯低気圧」の意味・わかりやすい解説

熱帯低気圧
ねったいていきあつ
tropical cyclone

熱帯または亜熱帯地方に発生する低気圧の総称。風の弱いものから台風ハリケーンのように強いものまである。温帯低気圧に比べると,等圧線が円形であること,前線を伴わないこと,主要なエネルギー源が水蒸気の潜熱であること等が特徴的で,大部分が海上で発生・発達し,陸上では衰弱する。水平スケールは数百kmで,温帯低気圧のそれよりやや小さいが中心気圧は非常に低く 900hPa以下になることもあり,最盛期には眼(→台風の眼)が存在する。気象情報等でこの語を用いる場合は,台風に満たない,低気圧域内の最大風速がおよそ 17m/s(34kn,風力8)未満のものをさす。なお,アメリカ合衆国では風速に 1分間平均値を採用しており,日本などで採用されている 10分間平均値とは異なるため,熱帯低気圧を地域間で比較する場合には注意が必要である。熱帯低気圧の発生場所は熱帯海域であるが,赤道付近ではコリオリの力がないために少なく,ペルー沖では海水温が低いために発生しない。

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改訂新版 世界大百科事典 「熱帯低気圧」の意味・わかりやすい解説

熱帯低気圧 (ねったいていきあつ)

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世界大百科事典(旧版)内の熱帯低気圧の言及

【風】より

…この経験則は考案者の名をとってボイス・バロットの法則として知られている。(3)台風 熱帯地方で発生する低気圧を熱帯低気圧tropical cycloneというが,このうちで域内の最大風速が17m/s以上のものを台風と呼んでいる。台風域内の風速分布は図14に示すように,台風の中心付近でV/R=一定(Vは風速,Rは中心からの距離),その外域でVR=一定のランキンの複合渦となっていると考えてよいであろう。…

【台風】より

…北太平洋西部(北半球の東経180゜以西の太平洋)や南シナ海に現れる熱帯低気圧のうち,最大風速が17.2m/s以上になったものをいい,台風の強さに達しない熱帯低気圧を〈弱い熱帯低気圧〉と呼ぶ。 台風は空気の巨大な渦である。…

【低気圧】より

…今日では気象衛星を使って大気圏の外から,低気圧に伴う雲,つまり低気圧の外観をとらえることができる。 低気圧は温帯から極の間にできる温帯低気圧と熱帯地方にできる熱帯低気圧に分類されている。これは単に発生域の地理的な違いだけでなく,その構造,成因も異なるからである。…

※「熱帯低気圧」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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