日本大百科全書(ニッポニカ) 「掘抜き井戸」の意味・わかりやすい解説
掘抜き井戸
ほりぬきいど
artesian well
地下の不透水層を掘り抜いてその下の滞水層の水をくみ出すために掘った井戸。浅い地下水は日照りが続くと枯れ、地表からの汚染を受けやすい。それに比べ不透水層下の滞水層に遠方の山地などから水が豊富に涵養(かんよう)されている場合、その地層から水量的に安定した良質の水を取り出せる。昔、硬い不透水層(粘土層や岩盤)を人力で打ち破って深い井戸を掘るには高度の技術と多大な労力とを必要としたので、比較的簡単に掘れる浅井戸に対してこうよばれた。日本では江戸末期から明治中期にかけて上総(かずさ)掘りなどの優れた手掘り工法が発達した。水圧と水量とがともに十分な場合には自噴し噴(ふ)き井戸となるが、自噴しないものは動力でくみ出す。現在、大量に地下水を使用している工場やビルの井戸は掘抜き井戸である。
[小林三樹]
『堀越正雄著『井戸と水道の話』(1981・論創社)』