半導体集積回路(IC=Integrated Circuits)に情報を記載し、荷札(タグ tag)またはバーコード・ラベルの役割をする小さいチップ。電子タグ、無線タグ、RFID(Radio Frequency Identification=無線認証)ともよぶ。商品などに貼付したり埋め込んだICチップに記録された情報を、内蔵する小形アンテナやコイルを介して電波や電磁誘導、電磁結合により非接触で外部と情報を交換する。これらは用途に応じた形状と読み/書き方式、記憶容量をもち、パッシブ型は情報交換時に電力を非接触で外部から受け、アクティブ型は内蔵電池を利用する。別に光、超音波を利用する方式もある。
ICタグの形状には円板型、円筒型、カード型、箱型、貼付可能なラベル型があり、長い方向で数ミリメートルから数十ミリメートルで薄形である。情報の読み出し専用と読み書き可能のものがあり、読み/書き装置(リーダー/ライター)との距離は使用周波数に応じて、数センチメートル以下の密着型には135キロヘルツ(kHz)以下の電磁結合または電磁誘導方式を、1メートル程度の近接型には13.56メガヘルツ(MHz)クラスの電磁誘導方式を、数メートル以上の遠隔型には860メガヘルツ以上の電波方式を用いている。
記憶容量の比較的少ないIDなどを扱うICタグは、ROM(読み出し専用)型または追記可能なWORM(1回書き込み多回読み出し)型メモリーを用いる。読み書き可能なタグには比較的大容量のRAM(読み書き可能)型メモリーを用い、センサーやデータ処理回路を付加した高機能なものもあるが、高価である。
バーコードの進化したものと期待されているパッシブ型は、自力では電波は出せないが、小型軽量で半永久的である。読み取り距離はミリクラスから数メートルのものが多く、現状では数十円程度。バーコードとは桁(けた)はずれの情報量を記憶でき、泥やあかなどの汚れに強く、ケースのままでも読み書きができ、瞬時に多数のタグにアクセス可能などバーコードにはない利点は多く、繰り返して書き込みのできるものもある。標準的な128ビットのICタグではIDだけを書き込んでおき、ネットワーク側に記録されているデータを利用する。しかし、近くのものの読み落としや、遠くから読まれてしまうなどのプライバシー保護への配慮は必要で、バーコードなみの普及には1個10円以下であることが必要という価格上の課題も残されている。POS(ポス)とか免許証、入退室管理、書庫管理などに用いる。
アクティブ型は自力で電波を出すため、寿命は内蔵電池の寿命で決まり数年位である。しかし、高機能で記憶容量を大きくしやすく、ICタグ側から読み/書き装置やほかのICタグなどへのアクセスを可能としたもの、センサーなどを搭載したものもある。価格は1000円以上。工場の自動管理(FA)や荷物の仕分け、医療・動物などの追跡・履歴管理などに用いる。
ICを識別に用いたカードの特許出願は意外と古く1970年、ICタグは1980年代に登場、需要が急増するのは21世紀初頭に登場したJRのSuica(スイカ)などからである。普及に伴い、ICタグの規格統一が国際的に図られている。
[岩田倫典]
『砂川克・菊井広行著『最新特許にみるICカード開発としくみ』(1988・工業調査会)』▽『荒川弘煕編、NTTデータ・ユビキタス研究会著『ICタグって何だ?――ユビキタス社会を実現するRFID技術』改訂版(2003・カットシステム)』▽『石井宏一著『「ICタグ」がよくわかる――流通情報革命の切り札』(2004・オーエス出版)』▽『日本ユニシスICタグ研究会監修、秋山功・井口伸奏・末永俊一郎他著『ICタグの仕組みとそのインパクト』(2004・ソフト・リサーチ・センター)』▽『Klaus Finkenzeller著、ソフト工学研究所訳『RFIDハンドブック――非接触ICカードの原理と応用』第2版(2004・日刊工業新聞社)』▽『井熊均著『ICタグビジネス――実践手法と新分野への適用』(2004・東洋経済新報社)』▽『根日屋英之・植竹古都美著『ユビキタス無線工学と微細RFID――無線ICタグの技術』第2版(2004・東京電機大学出版局)』▽『井上能行著『ICタグのすべて――しくみ、技術から生産・流通での運用まで』(2004・日本実業出版社)』▽『日本自動認識システム協会企画協力、吉岡稔弘著『絵とき無線ICタグ――広がるRFIDの世界』(2004・オーム社)』▽『岸上順一監修『ポイント図解式RFID教科書――ユビキタス社会にむけた無線ICタグのすべて』(2005・アスキー)』▽『宇佐美光雄・山田純編『ユビキタス技術 ICタグ』(2005・オーム社)』▽『白鳥敬著『「ICタグ」がビジネスを変える』(2005・ぱる出版)』
(懸田豊 青山学院大学教授 / 2007年)
「無線IDチップ」のページをご覧ください。
出典 (株)朝日新聞出版発行「知恵蔵」知恵蔵について 情報
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