アメリカの大学スポーツを統括する非営利団体。英語のNational Collegiate Athletic Associationの略。日本では「全米大学体育協会」「全米学生スポーツ協会」などと訳される。本部(従業員約500人)はインディアナ州インディアナポリス。2019年時点でアメリカンフットボール、バスケットボール、野球、アイスホッケー、テニス、ゴルフ、陸上、水泳、レスリング、体操など24競技の90大会を運営。全米に約2300ある大学のうち1100を超える大学が加盟し、登録選手数は約46万人、大会出場選手は約5万2000人に達する。年間収入は約1200億円(2017年で11億ドル)で、大学スポーツ関連組織としては世界最大規模である。おもに、(1)大学間や地域リーグ「カンファレンスConference」のスポーツ競技の統括・管理、(2)スポーツと学業の両立を図るためのルールづくり、(3)テレビ放映権料を中心とした収入の確保と加盟大学などへの配分、の機能を担っている。とくにアメリカンフットボールやバスケットボールのリーグ戦は全米にテレビ中継され、プロスポーツを上回る高い人気があり、NCAAの権威や影響力は非常に強い。
アメリカの大学のアメリカンフットボールの試合で死傷事故が相次いだため、1905年、当時の大統領セオドア・ルーズベルトが大学スポーツの改革を要求。これを受け、1906年に発足したIAAUS(合衆国大学間体育協会、Intercollegiate Athletic Association of the United States)が、NCAAの前身である。1910年に現名称となった。競技レベルに応じ、加盟大学を1部(Divison Ⅰ)、2部(Divison Ⅱ)、3部(Divison Ⅲ)に区分し、各部ごとに多くの競技の全米大会を開催する。スポーツ奨学生には授業料、寮費、小遣いなどを支給する奨学金制度、フルスカラシップfull scholarshipを採用。学業を優先するため、練習時間を週20時間内に規制し、学期ごとに成績が基準に達しない学生の出場停止や奨学金剥奪(はくだつ)といった罰則規定を設けている。厳格なアマチュア規定があり、奨学金以外のいっさいの利益受給を禁じている。NCAAの収入はテレビ放映権料のほか、入場料、広告収入、グッズ販売、NCAAブランドを冠した商品・サービスのライセンス料、協賛金などからなる。この収入は加盟大学や地域リーグへ配分され、施設整備や奨学金に利用されている。
なお、日本では、2018年(平成30)にアメリカンフットボール、ボクシング、レスリング、体操などアマチュアスポーツの不祥事が相次いだことから、大学スポーツの健全な発展やスポーツビジネスの活性化のため、2019年3月、日本版NCAAである大学スポーツ協会(UNIVAS(ユニバス):Japan Association for University Athletics and Sport)が創設された。
[矢野 武 2019年6月18日]
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