父母と教師を構成員とする団体。〈父母と先生の会Parents and Teachers Association〉の略。19世紀末アメリカで起きた児童福祉のための母親運動が始まりで,市や町の環境浄化活動や教育条件の整備向上を進める団体の集まりである〈父母と教師の全国協議会National Congress of Parents and Teachers〉(1924結成)が最も有名である。日本でも,第2次大戦中までは父兄会,後援会,保護者会などがあったが,おもに学校の財政面・物質面に奉仕する団体であった。戦後,教育基本法の公布,6・3・3制の学校教育制度の発足とともに,PTAが誕生した。これは1946年3月に来日したアメリカの第1次教育使節団の報告書と翌47年3月この示唆をうけた文部省通達〈父母と先生の会--教育民主化の手引〉にのっとって全国の小・中・高の学校単位につくられた(1948年4月の文部省調査によれば,小学校85%,中学校83%,高等学校65%)。
日本のPTAは発足当時,次の目的を実現することが期待された。(1)児童青少年の福祉の増進,(2)市民の権利と義務の理解をうながす成人教育の振興,(3)民主教育の理解の推進,(4)家庭と学校の連携協力,(5)父母,教師,一般社会の協力による児童青少年の健全育成,(6)学校教育環境の整備,(7)児童青少年の補導,保護,福祉に関する法律の制定,(8)公立学校の教育予算の確保,(9)地域の社会教育の振興,(10)国際親善,の各項である(〈父母と先生の会参考規約〉1948)。こうしてPTAは子どもの幸せを守り,増進する自主団体として,教育問題の学習,父母と教師の親睦,環境浄化の奉仕活動,教育世論の形成などを推進していくことになった。しかし,そのほとんどが従来の後援会や父兄会などの性格をのこしたままであり,くわえて全員自動加入,学校単位の組織,在籍児童・生徒の両親に限る会員制,学校後援会的な性格など,アメリカとちがって市民団体的な性格が弱いために,学校の付属機関のような存在になりやすく,一部有力者の支配する形式的行事中心のPTAが少なくない。
この傾向に対して,役員選出の民主化,任意加入制への切替え,地域単位のPTAづくり,成人教育活動の振興に努力するPTA改革の動きも進んできた。とくにPTAの主体である母親会員は,生活環境の浄化,小児麻痺ワクチンの緊急輸入,高校増設の要求,公教育費の私費負担の軽減などに活躍し,広報委員会や成人教育委員会の活動を通して女性運動の活動家も生まれた。今日,主婦のパート労働への進出,受験教育の激化などで,役員・委員のなり手がなく,さらにはPTAのない学校も出てきたが,校内暴力や非行の増加から〈地域の教育力〉の回復に努力しているPTAも少なくない。現在,PTAの全国組織として,日本PTA全国協議会(1952結成)や,全国PTA問題研究会(1971結成)がある。
執筆者:室 俊司
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(2016-6-2)
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