REACH規則(読み)りーちきそく

日本大百科全書(ニッポニカ) 「REACH規則」の意味・わかりやすい解説

REACH規則
りーちきそく

化学物質の登録、評価、認可および制限(Registration, Evaluation, Authorisation and Restriction of Chemicals)に関するEUヨーロッパ連合規則(Regulation (EC) No 1907/2006 of the European Parliament and of the Council of 18 December 2006)のことである。英文名称を略してREACH規則と通称されている。2007年6月に施行され、EU諸国に直接適用されている。2001年以降EUにおいて進められていた化学物質の安全確保対策の一環であり、人の健康および環境に対する危害の防止を目的として、化学物質に関連する既存のEU指令やEU規則を変更した。

 REACH規則の対象とされる化学物質は、新規(1981年以降に上市(じょうし)のもの。上市は市場に出すput on the marketの意)か既存かを問わず、事業者当り年間の製造・輸入量が1トンを超えるものである。それらの化学物質について、製造・輸入事業者は安全評価を行い、フィンランドヘルシンキに設立されたヨーロッパ化学物質庁(ECHA=European Chemicals Agency)に、定められた文書によって登録しなければならない。なお、既存化学物質の登録には、事業者当りの製造・輸入量に応じて期限が設定されている。

 ECHAは、提出された文書を評価し、必要に応じ、追加試験の実施または追加情報を事業者に要求することができる。その評価の結果、非常に高い懸念を有する物質(SVHC=Substance of Very High Concern、人の健康や環境に対してきわめて深刻な影響を及ぼすもの)としてECHAが公示したものについては、その使用と上市にあたりEU委員会の認可が個別的に必要とされる。認可にあたっては、危険性の管理の程度、代替しうる物質や工程の存在、社会経済的便益と危険性との比較、代替化の検討計画などが考慮される。他方、人の健康および環境に対して受け入れがたい危険性を有する物質については、製造、上市および使用に対して、条件付与または禁止という制限がとられる。

 REACH規則の効力はEU域外には及ばないが、RoHS(ローズ)指令と同様に貿易を通じて域外企業にも影響が及ぶため、草案段階から、コスト増や貿易障壁に関する懸念が示されていた。それらを受けて、登録の重複回避や対象物質の基準の明確化などの修正が行われた。

 なお、これら対象物質の分類、表示、包装については、国連の提唱するGHS(Globally Harmonized System of Classification and Labelling of Chemicals、化学品の分類および表示に関する世界調和システム)の一翼を担うCLP規則(Classification, Labelling and Packaging of Substances and Mixtures、分類、表示、包装に関する規則)が2009年1月20日に施行されたため、REACH規則においても、CLP規則に合わせるための段階的な移行措置がとられている。たとえば、SDS(Safety Data sheet、安全性データシート)に関するREACH規則第31条に追加された第10項に従って同規則付属書ⅡにおけるSDSが改定された。

[磯崎博司]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

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