日本大百科全書(ニッポニカ) 「RoHS指令」の意味・わかりやすい解説
RoHS指令
ろーずしれい
電気電子機器に含まれる特定有害物質の使用制限(Restriction of the use of certain Hazardous Substances in electrical and electronic equipment)に関するEU(ヨーロッパ連合)指令(Directive 2002/95/EC of the European Parliament and of the Council of 27 January 2003)のことであり、2006年7月1日から施行された。英文名称を略してRoHS指令と通称されている。EU諸国はこの内容に則した国内法令を整備しなければならない。
RoHS指令は、有害物質の使用制限とともに、人の健康の保護および環境に健全な電気電子機器廃棄物の再生と処分を目的としている。制限される有害物質は、鉛、六価クロム(クロム(Ⅵ)化合物)、水銀、カドミウム、ならびに、PBB(ポリ臭化ビフェニル)およびPBDE(ポリ臭化ジフェニルエーテル)という2種類の臭素系難燃剤の計6物質である。また、対象とされる電気電子機器は、WEEE(ウィー)指令に定められているカテゴリーに掲載されている製品であるが、カテゴリー(8)医療用器具と(9)監視・制御機器は除外される。具体的には、家電製品、情報・通信機器、音響・映像機器や楽器などの消費者向け機器、照明装置(器具および電球)、電動工具、玩具(がんぐ)、レジャー・スポーツ用品、自動販売機などである。なお、自動車用の電気電子機器および電池については、それぞれ廃自動車指令(ELV指令End-of Life Vehicles Directive)および廃電池指令が適用される。
RoHS指令の効力はEU域外には及ばないが、前記の機器をEUに輸出する場合には、域外の製造事業者であってもRoHS指令に従わなければならない。そのため、RoHS指令は日本を含めて域外の企業にも影響を及ぼしている。その影響は、電気電子機器の製造事業者だけでなく、部品や材料の製造事業者など電気電子業界全体に及んでいる。たとえば、鉛を含まない「鉛フリーはんだ」は、「鉛はんだ」と比較して融点が高いため、部品や材料の耐熱性をあげなければならず、設計変更や鉛フリーはんだ装置の導入も必要とされている。
なお、プラズマディスプレーや液晶ディスプレーのガラス基板中に含まれる鉛など、有害物質の除去が技術的に困難な製品や部品については、現時点では適用除外とされている。
2011年6月8日に、その後の状況に対応するための改正が採択され、7月1日に交付、7月21日に発効した(2011/65/EU)。その改正は、除外されていたWEEE指令のカテゴリー(8)と(9)を対象に含めるとともに、カテゴリー(11)として「以上の10カテゴリー以外の電気電子機器」を追加した。また、RoHS対象製品をCEマーキング(EUにおける安全標章)の対象とした。なお、対象物質のほかに、今後、優先的にリスクを評価すべき4物質として、ヘキサブロモシクロドデカン(HBCDD)、フタル酸ビス(2-エチルヘキシル、DEHP)、フタル酸ブチルベンジル(BBP)、フタル酸ジブチル(DBP)を明記した。さらに、技術的に代替不能な場合の除外項目(付属書Ⅲ)に加えて、カテゴリー(8)と(9)の除外項目(付属書Ⅳ)を掲げるとともに、付属書Ⅲは最長5年、付属書Ⅳは最長7年という適用期限を定めた。
[磯崎博司]
『WEEE&RoHS研究会編著『図解 よくわかるWEEE&RoHS指令とグリーン調達――欧州環境規制で取引先が選別される』(2005・日刊工業新聞社)』