富山県東部、中新川郡(なかにいかわぐん)にある町。上市川流域と早月(はやつき)川上流部の山岳地帯を占める。1889年(明治22)町制施行。1941年(昭和16)音杉(おとすぎ)村を編入。1953年(昭和28)山加積(やまかづみ)、南加積、宮川、柿沢、大岩の5村と合併。1954年相ノ木、白萩(しらはぎ)の2村を編入。富山地方鉄道本線が通じる。平安時代から室町時代にかけて山岳信仰の盛んなころ、付近の山地に大岩、護摩堂(ごまどう)、千石(せんごく)などの山村集落が開けた。上市は江戸時代、立山山麓(さんろく)の市場町であった。細川機業の繊維工場があり、また富士化学、池田模範堂など多くの製薬工場があり、富山県東部の製薬、売薬の一中心地をなしている。真言密教大本山大岩山日石寺(にっせきじ)の磨崖仏(まがいぶつ)(大岩不動)は国指定重要文化財。トガ(ツガ)の並木(県指定天然記念物)の参道で有名な眼目山(さっかさん)立山寺(りゅうせんじ)(曹洞(そうとう)宗)の古刹(こさつ)がある。早月川上流の馬場島(ばんばじま)は釼岳(つるぎだけ)冬山登山の基地。面積236.71平方キロメートル、人口1万9351(2020)。
[深井三郎]
『『上市町誌』(1970・上市町)』
富山県東部,中新川郡の町。人口2万1965(2010)。上市川の上・中流域および早月川上流域を占め,北西部に上市川,白岩川の扇状地が広がる。東部は劔岳,大日岳など標高2000~3000m級の山々が連なる飛驒山脈の山岳地域で,中部山岳国立公園に含まれている。中心集落の上市は上市川の谷口集落で,江戸時代は立山参拝の道筋にあたり,また不動明王の磨崖仏で知られる大岩山日石(につせき)寺(大岩不動)や曹洞宗の立山(りゆうせん)寺をひかえて,参拝客でにぎわった。滑川とともに富山売薬の中心で,製薬工場のほか家庭薬配置業者も多く集まる。農業は米作を主とするが,タバコの栽培も行われる。劔岳直下,早月川上流の馬場島(ばんばじま)は劔岳登山の基地で,キャンプ場もある。上市川上流の上市ダムは海が見えるダムとして知られる。富山地方鉄道本線が通じる。
執筆者:千葉 立也
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出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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