標準産業分類(読み)ひょうじゅんさんぎょうぶんるい(英語表記)standard industrial classification

日本大百科全書(ニッポニカ) 「標準産業分類」の意味・わかりやすい解説

標準産業分類
ひょうじゅんさんぎょうぶんるい
standard industrial classification

統計の正確性と客観性を保持し、各種の統計間の比較可能性を高め、統計利用の向上を図る目的で設けられる統計基準の一つであり、統計調査の産業表章に関する標準的な分類体系を示すもの。

 国際的には、1857年に統一産業分類を作成しようとする会議がウィーンでもたれており、20世紀に入り、国際連盟による分類基準の作成作業を経て、1948年に国際連合の統計委員会の手により「全経済活動に関する国際標準産業分類」International Standard Industrial Classification of All Economic Activities(略称ISIC)が完成された。各国の統計の信頼できる国際比較を可能にするため、産業の分類をできるだけこのISICに準拠して作成するように配慮されている。

 わが国でも、「日本標準産業分類」が、このISICに準拠する形で作成されている。わが国で明確な形で初めて産業分類がつくられたのは1930年(昭和5)の第3回国勢調査のときであったが、分類上の統一性などに問題があり、整然とした産業分類の作成は、第二次世界大戦後まで待たねばならなかった。

 戦後、国連提唱による1950年世界センサスの実施に先だち、連合国最高司令部(GHQ)は日本政府に対し、センサスのための基礎作業として、統計の標準的な分類体系の作成を勧告した。戦後の日本標準産業分類は、この勧告に基づいて統計委員会産業分類専門部会の手によって1949年(昭和24)10月に完成されたものである。この分類は実地に使用したあとの改訂を経て、51年4月に、「統計法」に基づき、「統計調査に用いる産業分類並びに疾病傷病及び死因分類を定める政令」(政令127号)として制定され、同時に第1回の改訂が行われた。その後も、わが国産業の変化に伴う改訂を重ね、93年(平成5)10月の第10回目の改訂(施行は94年4月)を経て現在に至っている。その間、官庁民間を問わず各種の統計において産業分類の基準として広く利用されてきたが、とくに官庁統計に関しては、統計法に基づく前記の政令により、国などが統計法に基づいて行う統計調査の結果を表示する場合においては、この日本標準産業分類(および疾病、傷病および死因の統計分類)を使用する義務が課せられている。

 日本標準産業分類における「産業」とは、事業所において社会的な分業として行われる財貨・サービスの生産・提供にかかわる経済活動を意味し、そのすべてが対象となり、営利活動だけでなく、教育、宗教、公務、医療などの非営利的活動も含められる。また、ここでの「事業所」とは、財貨の生産またはサービスの提供を人および設備を有して単一の経営主体の下で継続的に行っている一定の場所を意味するが、その事業所が複数種類の財貨・サービスの生産・提供活動を行っている場合には、過去1年間における収入額または販売額がもっとも大なる事業によって、その事業所の帰属産業が決められる。

 産業区分の基準としては、
(1)生産される財貨または提供されるサービスの種類、
(2)財貨生産またはサービス提供の方法(設備、技術など)、
(3)原材料の種類および性質、サービスの対象および取り扱われるもの(商品など)の種類、
が重視されるほか、事業所の数、従業員の数、生産額または販売額などの諸点も考慮される。事業主体については、官営、民営の区別を問わず、その事業所が同一種類の経済活動を行うものである限り、同じ産業として分類される。

 分類の構成は、もっとも大まかな大分類から、順次に分化した中分類、小分類、細分類の4段階分類となっている。最近時の第10回改訂による産業分類においては、大分類が14産業で、AからNまでのアルファベットがそれぞれの産業名に付されており、中分類では99産業に区分されて、それぞれの産業は2桁の数字によって表されている。以下、小分類は3桁数字の表示で463産業区分、細分類については4桁数字表示で、1324産業区分となっている。これらの産業分類区分は、それらの表示形式から、中分類については2桁産業分類、小分類については3桁産業分類などとよばれることもある。

[高島 忠]

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