日本大百科全書(ニッポニカ) 「精神障害者保健福祉手帳」の意味・わかりやすい解説
精神障害者保健福祉手帳
せいしんしょうがいしゃほけんふくしてちょう
精神障害の状態にあると認定された人に都道府県知事から交付される手帳。なんらかの精神疾患のために、長期にわたり日常生活や社会生活において制約がある人を対象とする。「精神保健及び精神障害者福祉に関する法律」(昭和25年法律第123号)に基づく。精神障害者からの市町村への申請を受けて、各都道府県・政令指定都市の精神保健福祉センターが審査を行う。1995年(平成7)の法改正により手帳制度が創設された。認定対象はすべての精神疾患で、統合失調症、うつ病やそううつ病、てんかん、薬物やアルコールによる急性中毒およびその依存症、高次脳機能障害、自閉症や学習障害、注意欠陥多動性障害などの発達障害、ストレス関連の障害などがその代表的なものである。これらの障害の状態に応じ、1級から3級までの障害等級がある。手帳の有効期限は2年で、2年ごとに診断書を提出し、等級認定を受ける。
精神障害者保健福祉手帳は福祉関係のサービスの利用資格を示す証票であり、保有者は障害等級に応じて国や地方、企業、団体などによる支援策が受けられる。たとえば、NHK受信料の減免、税金の控除や減免などのほか、地域により公共料金や交通運賃、携帯電話料金などの割引がある。
2013年(平成25)、厚生労働省は2014年から精神障害者保健福祉手帳の性別記載欄を削除する方針を示した。性同一性障害の人への配慮を示したもので、このような証明書では初の事例となる。また同省では、2018年4月から、企業に対してこの手帳をもつ人の雇用を義務づけることを目ざしており、障害者雇用促進法の改正が議論されている。
[編集部]