A-Cバイパス術(読み)エーシーバイパスじゅつ

百科事典マイペディア 「A-Cバイパス術」の意味・わかりやすい解説

A-Cバイパス術【エーシーバイパスじゅつ】

心筋梗塞狭心症に行う手術法の一つで,薬物療法バルーン療法では治療できない場合に行う。冠状動脈の一部が極端に狭くなって,血液の流れが著しく低下すると,胸の痛みが起こり(狭心症),その先の心筋壊死(えし)する(心筋梗塞)。これを防ぐために,一部が細くなった血管の代わりに,本人の大腿部静脈切り取り,これを使って心臓に新たな血液の流れをつくる方法がA-Cバイパス術である。 手術が成功すれば,冠状動脈を流れる血液の量が増加して,狭心発作もなくなり,予後もよくなる。これと同じ手法が,川崎病後遺症として起こる冠動脈瘤の治療に用いられ,突然死を防ぐ道が開けてきた。 A-Cバイパス術は,米国ではポピュラーな手術の一つで,日本でも広く行われるようになった。ただし,バイパス術全般でみると,病院によって死亡率が1〜10%と開きがあり,治療成績の差が大きい。症例数が多く,この手術法に習熟した専門医のいる病院を選ぶことが大切である。 なお,通常のバイパス術は心臓を停止させて人工心臓を動かして行い,胸を30cm以上切り開いて肋骨も取るなど,患者負担が大きい。欧米では数年前から,こうした負担を解消した低侵襲冠動脈バイパス術(MIDCAB)が開発され,1996年から日本でも行われている。この方法では,心停止をしないために心筋の負担が少ない。さらに,胸に5〜8cmの切り込みを入れて,そこから差し込んだ胸腔鏡で内部を見ながら手術をするため,ダメージもかなり少ない。1997年までに全国で50例以上が実施されている。 また,開胸手術がいらず,患者の負担も少ないバルーン療法も一般的になっている。ただし,この方法は手術をした場合よりも再発する可能性が高い。→胸腔鏡下手術

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