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狭心症 きょうしんしょうangina pectoris

翻訳|angina pectoris

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典の解説

狭心症
きょうしんしょう
angina pectoris

心臓部から胸の前面にかけて一過性の激しい疼痛発作を主徴とする症候群冠状動脈アテローム硬化があって内腔が閉塞または狭窄し,心筋への血流量が不足するために起る。発作が一過性で,あとに病変を残さないものを狭心症,心筋の壊死を起すものを心筋梗塞という。

本文は出典元の記述の一部を掲載しています。

出典|ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典
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知恵蔵の解説

狭心症

冠動脈の一過性の血流途絶により起こる疾患で、圧迫されるような胸痛発作が見られるニトログリセリンの投与で痛みが消失する。身体を動かすことで誘発される労作狭心症、安静時に出現する安静狭心症(自発狭心症)がある。また、胸痛などの症状があるにもかかわらず、冠動脈の異常が見つからない微小血管狭心症もある。これは、心筋の中を走っている細小血管に攣縮や血栓が詰まるなどして、血流が悪くなって起こるもので、女性に多い。発作の予防にはカルシウム拮抗剤などが有効。時にはA‐Cバイパス術PTCA(経皮的冠動脈形成術)が行われる

(今西二郎 京都府立医科大学大学院教授 / 2007年)

出典|(株)朝日新聞出版発行「知恵蔵」
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デジタル大辞泉の解説

きょうしん‐しょう〔ケフシンシヤウ〕【狭心症】

心臓部の締めつけられるような一過性の痛みを主症状とする病気。冠状動脈の硬化・痙攣(けいれん)などが原因で血流が一時的に減少し、心筋への酸素供給が不足するために起こる。痛みが左腕のほうに放散するのが特徴。

出典|小学館
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百科事典マイペディアの解説

狭心症【きょうしんしょう】

虚血性心疾患の一つ。冠動脈からの酸素供給が心筋の酸素需要を下回ったときに生ずる前胸〜左胸部の数分〜十数分間の一過性の疼痛(とうつう)発作。疼痛は締めつけられ,圧迫されるような性質で,冠動脈硬化に過激な体動が加わった場合,甲状腺機能亢進などの場合に生ずる。
→関連項目A-Cバイパス術オースラーカフェイン冠不全心臓病睡眠時無呼吸症候群テオフィリン動脈硬化バルーン療法

出典|株式会社日立ソリューションズ・クリエイト
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栄養・生化学辞典の解説

狭心症

 心筋への酸素の供給不足によって起こる一過性の虚血性疾患.

出典|朝倉書店
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生活習慣病用語辞典の解説

狭心症

動脈硬化で狭くなった冠動脈 (心臓に酸素や栄養素を供給する血管) で、血液の流れが悪くなるために起きる病気のことで、心臓が一時的に酸欠状態に陥いる状態をいいます。血液の流れが再開すれば症状は消えますが、心筋梗塞の前兆となることもあります。主な症状は、胸痛、肩から背中にかけての痛みなどが一般的で、発作は 5 分以内で収まることがほとんどです。心筋梗塞には至らず、回復するのが特徴です。発作にはニトログリセリンの舌下錠が有効です。

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家庭医学館の解説

きょうしんしょう【狭心症 Angina Pectoris】

心臓のはたらきと構造
狭心症とは
狭心症の症状
狭心症の原因
狭心症の検査
狭心症の治療
狭心症の生命予後

心臓のはたらきと構造
 心臓は筋肉のかたまりで、収縮と拡張をくり返してポンプのように全身の臓器に血液を送り出している臓器です。
 その内部には4つの部屋があり、左右2組の心房(しんぼう)と心室(しんしつ)に分かれています(図「心臓のしくみ」)。このなかで、ポンプの源流となるもっとも重要な部屋が左心室(さしんしつ)で、心臓の筋肉の大部分は左心室をつくるために用いられています。
 心臓は全身の臓器に血液を送るポンプですが、心臓もまた臓器の1つです。そのため、血液の供給を心臓自身から受けています。その供給路が冠動脈(かんどうみゃく)(または冠状動脈(かんじょうどうみゃく))という名前で呼ばれる動脈です(図「冠(状)動脈のしくみ」)。
 心臓は、常に収縮と拡張をくり返しているため、その仕事量は非常に大きく、平均的日本人で、1分間に約5ℓもの血液を送り出す仕事をしています。この仕事に必要なエネルギーは、すべて冠動脈を流れる血液によってまかなわれています。ふつう、心臓の筋肉(心筋(しんきん))1gあたり、1分間に約100mℓの血液が必要とされています。
心筋虚血(しんきんきょけつ)
 心筋に流れる血液量が必要量に達しなくなると、さまざまの異常がおこります。この状態を総称して心筋虚血といいます。
 心筋虚血は、血液の必要量と供給量のアンバランスによって生じますが、そのアンバランスの原因には、必要量が増加した場合と、供給量が低下した場合との2つがあり、それぞれの発生状況や程度が異なります。
 心筋虚血となった筋肉は、本来の収縮・拡張運動が低下したり、筋肉が過敏状態となるために不整脈(ふせいみゃく)が発生しやすくなります。そして心筋虚血が長く続くと、最後には心筋細胞が生きていけなくなり、部分的に死滅します。これが心筋梗塞(しんきんこうそく)(症(しょう))です(「心筋梗塞(症)」)。

狭心症(きょうしんしょう)とは
 心筋虚血がおこると、「胸が痛い」「胸が圧迫される」などの症状を感じることがあります。この症状を狭心症と呼びます。また、病名としても使われています。
 狭心症の原因は心筋虚血ですから、胸部に症状が出ることが多いのですが、「くびが締まる感じがする」「左腕がしびれる」「背中が痛む」など、かならずしも胸部だけではない場所にも症状が出ることがあります。きわめてまれですが、「頭痛がする」という患者さんもいます。
 したがって、胸部の症状ではないからといって、かならずしも狭心症ではないとはいえないのです。また、症状が出たときの状況(安静時か労作時(ろうさじ)か、昼間か早朝か)、持続時間、回数などもたいせつな情報です。これらは狭心症の診断のためばかりでなく、後述する不安定狭心症(ふあんていきょうしんしょう)かどうかの手がかりにもなるのです。

狭心症(きょうしんしょう)の症状
 典型的な狭心症の症状は、(1)寒いときに、(2)階段や登り坂を、(3)荷物を持って、(4)歩いたら、(5)胸が圧迫されるような感じがして、(6)立ちどまると、(7)数分間で症状が消える、というものです。
 ただし、冠(かん)れん縮(しゅく)(後述)による特殊なタイプの狭心症の場合は、早朝、安静時に生じることが多いという特徴があります。
 逆に、①瞬間的な痛み、②数日間続くような長時間の症状、③チクチクした痛み、④痛い場所を指で押してみるとさらに痛みが増す、⑤指でさし示すことができるような狭い範囲の痛み、などの症状を示す場合は、多くの場合、狭心症ではありません(ただし、②は心筋梗塞(しんきんこうそく)の可能性があります)。

狭心症(きょうしんしょう)の原因
 狭心症は、心筋が必要とする血液量が不足する(心筋虚血)ために生じるものですが、大きく分けてつぎの2つの原因が考えられます。
 第1は、動脈硬化(どうみゃくこうか)などのために冠動脈の内径が部分的に狭くなり、血液の流れが悪くなる。
 第2は、冠動脈が部分的にけいれんして、急に血管の内径が狭くなり、血流が悪くなる(動脈がけいれんする現象をスパスムまたはれん縮(しゅく)といいます)。
 この2つの原因は、いずれも心筋虚血および狭心症をひきおこします。症状の性質は同じですが、その成り立ちにちがいがあるため、発生状況が異なります。
 第1の原因によっておこるのが労作性狭心症(ろうさせいきょうしんしょう)です。これは労作(動作、運動)にともなって狭心症状が現われるものです。同じ運動を同じ程度行なうと必ず狭心症が出現するというように、再現性があることが多いのも特徴です。
 第2の原因によっておこるのが安静時狭心症(あんせいじきょうしんしょう)です。からだをとくに動かしていなくてもおこるもので、早朝によく発生し、睡眠中にも生じることがあるという特徴があります。
 ただし、第1と第2の原因が合併して狭心症が生じたり、労作によってスパスムが誘発されて生じるという例外もありますから、症状だけで原因を特定できるとはかぎりません。一般に、熟練した循環器専門医であれば、約80%の確率で、症状のみから狭心症の診断ができます。
◎不安定狭心症(ふあんていきょうしんしょう)
 狭心症のなかには、心筋梗塞症の前ぶれとして出現するものがあります。これを不安定狭心症と呼び、通常の狭心症と区別しています。
 心筋梗塞症になると心筋は壊死(えし)してしまうため、その筋肉領域は、もはやもとにはもどりません。つまり、筋肉としての役割をしなくなりますから、致死的な不整脈や心不全、心臓の部分的な破裂などをひきおこし、そのために死亡する可能性もあります。
 以上のことから、狭心症と心筋梗塞症とは、軌を一にする疾患であることがわかります。このような性質をもつ病気を合わせて虚血性心疾患(きょけつせいしんしっかん)と呼びますが、狭心症と心筋梗塞症のそれぞれの予後(よご)(治療後の経過)は決定的にちがいます。そのため、急性心筋梗塞症に移行する可能性が高い不安定狭心症であれば、すぐに医療機関(できれば循環器専門医がいる施設)を受診しなければなりません。
 急性心筋梗塞症の病因の1つに冠動脈内血栓(かんどうみゃくないけっせん)があります。不安定狭心症の場合もやはり血栓がかかわっていますから、アスピリンなどを用いた抗血小板療法(こうけっしょうばんりょうほう)やヘパリンによる抗凝固療法(こうぎょうこりょうほう)の有効性が報告されています。

狭心症(きょうしんしょう)の検査
心電図検査
 心電図は、狭心症の検査として基本的なものです。
 心筋虚血が発現していないときの心電図は正常所見を示します。つまり、病院を受診して心電図をとっている最中に狭心症が出現することはまれなので、安静時心電図が正常だからといって狭心症ではないとはかぎりません。そこで狭心症の診断のためには、つぎのような心電図を応用した検査が必要になります。
●運動負荷心電図(うんどうふかしんでんず)
 ベルトコンベアの上を歩いて運動することで心拍数や血圧を増加させ、心筋虚血を誘発する検査法です。心筋虚血が出現すると、特徴的な心電図所見がみられ、狭心症の判定をすることができます。
 この検査は、トレッドミル運動負荷試験といいますが、これ以外にも、備えつけの自転車を使って運動する検査(エルゴメーター負荷試験)や、階段を昇降して運動する検査(マスター運動負荷試験)などがあります。
●薬物負荷心電図検査(やくぶつふかしんでんずけんさ)
 検査の原理は運動負荷心電図検査と同じですが、心筋虚血を誘発する手段として、運動ではなく薬物を用います。足の具合が悪い人や、動脈瘤(どうみゃくりゅう)のために運動して血圧を上げてはいけない人などのために用います。
●ホルター心電図
 心電図波形を連続して磁気テープに記録する検査です。通常は24時間分の心電図を記録します。装置はかなり小さく、装着したまま日常の行動ができるため、ふだんの生活のなかで心筋虚血が生じているかどうかがわかります。
 ただし、良好な心電図波形が得られないことも多く、正確な診断ができないこともあります。スパスムによる安静時狭心症の診断には有用です。
◎核医学検査
 タリウムなどの放射性同位元素(ほうしゃせいどういげんそ)は心筋組織の中に取り込まれるため、組織のようすを画像として映し出して検査することができます。
 心筋虚血時には血流が低下するため、タリウムの対象領域への取り込み率も低下します。心筋梗塞の場合も取り込み率が低下しますが、狭心症では4~6時間後に再度撮像してみると、取り込みが回復しますので、区別できるようになります。
 この検査も、実際に心筋虚血が出現していないと異常を検出することはできませんから、運動・薬物負荷心電図試験と同様、心筋虚血を誘発しなければなりません。
冠動脈造影検査(かんどうみゃくぞうえいけんさ)
 狭心症は、冠動脈の器質的または機能的異常によっておこる病気ですから、冠動脈の狭窄(きょうさく)の具合を調べることが非常に重要です。冠動脈造影検査はふつう、入院(検査入院)して行ないます。
 この検査は、カテーテルという非常に細い管を大腿動脈(だいたいどうみゃく)(足のつけ根にある動脈)に挿入し、冠動脈の入り口まで進めて造影剤(放射線にあたると色がついて見える薬)を注入し、血管や血流のようすをX線撮影するものです。カテーテル挿入部位には、ほとんど傷は残りません。最近では手の動脈からカテーテルを挿入することもあります。
 以前はこの検査のために脳梗塞(のうこうそく)やアレルギー性ショックなどの重篤(じゅうとく)な合併症が発生することもありましたが、技術の進歩によって、現在の合併症発生率は0.1%程度に激減しています。この検査は、狭心症の治療方針を決めるうえでもたいへん大事なものです。

狭心症(きょうしんしょう)の治療
◎冠危険因子(かんきけんいんし)の是正
 狭心症や心筋梗塞症の患者さんには、①糖尿病、②高血圧、③高脂血症(こうしけっしょう)、④喫煙、⑤肥満、⑥家族歴などの素因が多くみられることが知られています。これらが冠危険因子ですが、できるだけこれらの冠危険因子を是正することがたいせつです。
 このような因子がある場合は、医師の指導のもとに、食餌療法(しょくじりょうほう)、運動療法、薬物治療などを適切に行なうことで、長期的な改善が期待できます。
 また、運動不足、高尿酸血症、精神的ストレス、エストロゲン低下なども危険因子であると報告されています。これらの解消も必要です。
◎薬物治療
 狭心症の治療に使われる薬物は、硝酸薬(しょうさんやく)、カルシウム拮抗薬(きっこうやく)、β遮断薬(ベータしゃだんやく)、アスピリンなどです。これらの薬物は、製薬会社によって、さまざまな種類の製品が発売されており、それぞれ特徴がありますが、基本的な薬理作用は同じです。
 カルシウム拮抗薬は、冠スパスムが原因の狭心症に対してとくに有効です。
 硝酸薬は、歴史のある薬物で、ニトログリセリンや硝酸イソソルビドは狭心症発作時の特効薬として、今も頻繁(ひんぱん)に使われています。
 狭心症発作はいつ出現するか予想できませんから、これらの薬は切らすことなく、必ず身につけておかなければなりません。
 硝酸薬を舌下(ぜっか)すると、いつもすぐに発作が消えるのに、消えないで続く場合は、心筋梗塞症に移行しつつある可能性があります。すぐに医療機関を受診すべきです。硝酸薬の効果は病状の変化と関連しています。診断上、重要な情報ですから、効果が変化した場合は必ず医師に伝えましょう。
 β遮断薬は、労作性狭心症発作の抑制にとくに有効ですが、急に中止すると、狭心症が悪化する場合があります (反跳現象(はんちょうげんしょう)といいます)。β遮断薬にかぎらず、狭心症に使用する薬物は、必ず医師の指導のもとに、確実に服用することがたいせつです。
 アスピリンは、抗血小板療法の代表的薬物です。とくに不安定狭心症のときには、有効であることが報告されています。
◎経皮的冠動脈形成術(けいひてきかんどうみゃくけいせいじゅつ)
 この治療法は、PTCAともいい、1977年から始まったもので、もう20年の歴史があります。冠動脈造影検査の技術を応用した治療法で、実際の手技も冠動脈造影検査と同じです。
 通常は、足のつけ根にある大腿動脈(だいたいどうみゃく)からカテーテルを挿入し、冠動脈まで進めます。まず、ガイドワイヤというきわめて細い針金を狭窄部(きょうさくぶ)の側(先端側)まで進めます。
 つぎに、ガイドワイヤに沿って、風船が先についた小さなカテーテルを狭窄部まで進め、風船をふくらませて狭窄した場所を広げます。
 PTCAは侵襲度(しんしゅうど)(からだへの負担の程度)が低いため、高齢の患者さんや他の合併疾患がある患者さんにも実施でき、入院期間も短期間ですみます。
 このようにPTCAには、有利な点が多いのですが、約30~40%の症例で、施行後3か月以内に再び狭窄がおこる(再狭窄)ことが最大の欠点です。そこで、ステントという非常に小さくて薄い金属製の管を狭窄部位に入れ、内側から血管を支持して再狭窄を防止する方法が最近試みられるようになりました。再狭窄率が約20~30%に低下するため、世界的に用いられるようになってきています。
 初期成功率は、狭窄部位の形態などによって異なりますが、完全に閉塞(へいそく)した病変では約70%程度、熟練した医師が施行すれば平均90%以上です。
◎冠動脈バイパス
 PTCAが開始される以前は、薬物治療の効果がない狭心症の患者さんには、もっぱら冠動脈バイパス術が行なわれてきました。
 この手術は、冠動脈狭窄部位よりも末梢側の冠動脈に、足の静脈などを移植して、血流のバイパス(迂回路(うかいろ))をつくる方法です。
 この方法には、PTCAでみられる再狭窄という現象がありません。そのため、手術が成功すれば、狭心症発作は長期間おこらなくなります。
 ただし、手術の際には開胸しなければならず、きわめて侵襲度が高いため、高齢者や合併疾患がある人には実施できないことがあります。
 また、静脈を使ってバイパスすると、5年前後でバイパスに狭窄や閉塞が生じることが多くなってきます。ところが、動脈を使ってバイパスすると、狭窄や閉塞が生じにくくなることがわかってきました。
 さらに、従来の手術は、人工心肺装置を使って一時的に心臓を停止させて移植術を行なう必要があるため、侵襲度が高かったのですが、最近では、肋骨(ろっこつ)と肋骨の間を切開して、重要な冠動脈に1つだけバイパスする方法も実施されはじめています。
 このように、冠動脈バイパスは現在でも重要な狭心症の治療法の1つです。

狭心症(きょうしんしょう)の生命予後
 狭心症そのものの生命予後は良好です。しかし、急性心筋梗塞症の死亡率は、比較的高いといわれています(医療施設によって異なりますが、7~40%程度です)。
 だからこそ、狭心症から急性心筋梗塞症へ移行しないようにすることがたいせつと考えられるのです。
 虚血性心疾患(きょけつせいしんしっかん)をもつ患者さんの生命予後は、さまざまの因子によって影響されますが、一般に、左室機能が悪い場合、そして狭窄または閉塞している冠動脈の数が複数(多枝病変(たしびょうへん))である場合、その生命予後はよくありません。
 図「3枝病変例の心生命予後」は、受けた3つの治療法別に心臓病で亡くなられた患者さんを比較調査した結果です。多枝病変の患者さんでは、薬物治療よりもバイパス術、またはPTCAを受けた患者さんのほうが生存率が高いことがわかります。
 最近、高脂血症(こうしけっしょう)の患者さんの場合、血液中のコレステロールを低下させる薬物を服用していると生命予後がよくなる、という研究結果も最近報告されています。
 そのため、バイパス術やPTCAだけでなく、日ごろの食餌療法(しょくじりょうほう)や薬物療法の重要性も再認識されてきています。

出典|小学館
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世界大百科事典 第2版の解説

きょうしんしょう【狭心症 angina pectoris】

冠状動脈の粥状硬化など,種々の原因で冠状動脈の血流が不足して一時的に心筋の酸素不足が生じ,その症状として数分間,胸が圧迫されるような苦しみや痛みを伴う発作をくり返す病気である。この苦しみの発作を狭心発作と呼び,これが数十分以上も続くときは,心筋の一部が壊死に陥り元どおりには回復しない心筋梗塞(こうそく)に移行することがある。1768年イギリスヘバーデンWilliam Heberden(1710‐1801)によって狭心発作と心臓との関係につき詳細に記述されたが,そのときにはまだ狭心症と心筋梗塞との区別は明確でなく,狭心症のなかに心筋の壊死を伴う心筋梗塞を含めて考えていた。

出典|株式会社日立ソリューションズ・クリエイト
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大辞林 第三版の解説

きょうしんしょう【狭心症】

胸骨(後)部に起こる一過性のしめつけられるような疼痛とうつう発作を主徴とする症候群。心臓壁血管(冠状動脈)の硬化や痙攣けいれん・狭窄きようさく・閉塞へいそくなどによって心筋へ流入する血液が減少するために起こる。アンギーナ。 → 心筋梗塞

出典|三省堂
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日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

狭心症
きょうしんしょう

前胸部に発作的におこる締め付けられるような圧迫感(不快感ないし絞扼(こうやく)感)を主徴とする症候群をいい、心筋の酸素需要と供給の不均衡に伴う心筋虚血(冠不全)が一過性に生じた際に引き起こされる。18世紀中ごろ、すでにイギリスの医師ヘバーデンWilliam Heberden(1710―1801)によって一つの疾患名として記載されたが、現在では前述のように心筋の一過性虚血に基づく症候群として定義されている。
 元来、欧米人において発生が多い傾向にあったが、わが国でも近年生活様式の変化に伴い、だんだん増加しつつある。一般に好発年齢は50歳代から60歳代であり、男性が女性に比べて圧倒的に多い。主症状は前述のような胸痛発作であるが、これは可逆的で、十数分以内に寛解することが特徴である。
 狭心症はその誘因により、労作狭心症、安静狭心症、および労作兼安静狭心症に分類される。労作狭心症は、心筋の酸素需要を増加させる運動などが誘因となるもので、安静狭心症は、明確な心筋の酸素需要の増加とは無関係におこるものをいう。原因としては、心臓への血液供給が不十分となる冠状動脈(冠動脈)の硬化性狭窄(きょうさく)、攣縮(れんしゅく)などが主であり、そのほか、相対的な心筋の酸素需要と供給の不均衡をおこす著しい心肥大や心臓弁膜症、あるいは甲状腺(せん)機能亢進(こうしん)症や重症貧血によることもある。一般に、歩行、階段昇降、荷重労働を行った際、あるいは安静時に一過性の胸痛発作を自覚したら狭心症を疑う必要がある。とくに、初発症状のおこり始めは心筋梗塞(こうそく)に移行しやすい不安定期として、その管理が重要である。診断に際しては、安静時および運動負荷心電図、テープ記録心電図、心筋シンチグラム、さらに冠動脈造影法が有用である。
 治療に際しては、前述の基礎疾患が明らかな場合はその治療が重要である。胸痛発作時にはニトログリセリン舌下錠が著効を示し、数分以内に発作が治まる。ただし、ニトログリセリン舌下錠は持続時間が短いので、予防薬としては不適当である。なお、心筋の酸素需給のバランス改善の面からは種々の薬剤を用い、さまざまな治療が試みられている。すなわち、持続性亜硝酸剤やカルシウム拮抗(きっこう)剤は冠動脈の攣縮を予防し、心筋の酸素消費量を抑制するので、優れた抗狭心薬である。また、心筋の酸素需要を減じるβ(ベータ)‐遮断剤も予防効果が期待される。これらの薬剤を単独あるいは併用して大量に使用しても、なおかつ発作が頻発、あるいは発作持続が長引くような症例では、外科的に大動脈‐冠動脈バイパス手術も試みられている。これは、冠動脈の狭窄部より末梢(まっしょう)側と大動脈を、自家静脈を用いたバイパス路で結ぶものであり、成功例では狭心症発作の消失効果などが得られる。また、冠動脈狭窄部を動脈内腔(くう)より強制的に拡大させる治療法(経管式冠動脈形成術)も試みられている。[井上通敏]

出典|小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)
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世界大百科事典内の狭心症の言及

【アンギーナ】より

…元来アンギーナとは口峡炎のことをさす。口峡は咽門とも呼ばれ,口腔から中咽頭に移行する狭くなった部分のことであり,のどの炎症ではれるといっそう狭くなるので,アンギーナの語はもっぱら扁桃を中心とした咽頭炎に使われてきたが,語源的にはギリシア語のagchonēと関係があり,体を締めつけられるという意味で,狭心症angina pectorisにもとられるので注意を要する。扁桃炎【中山 将太郎】。…

【アンギーナ】より

…元来アンギーナとは口峡炎のことをさす。口峡は咽門とも呼ばれ,口腔から中咽頭に移行する狭くなった部分のことであり,のどの炎症ではれるといっそう狭くなるので,アンギーナの語はもっぱら扁桃を中心とした咽頭炎に使われてきたが,語源的にはギリシア語のagchonēと関係があり,体を締めつけられるという意味で,狭心症angina pectorisにもとられるので注意を要する。扁桃炎【中山 将太郎】。…

【痛み】より

…このときブラジキニンやプロスタグランジンE2,プロスタグランジンI2が産生されるためである。心臓の冠状動脈が狭窄したときにみられる狭心症の痛みも同様な理由によって現れる。内臓器官のうち,胃,腸,尿管などは通常,焼いても切っても痛くないが,これらが強く収縮したり伸ばされたりすると痛みが起こる。…

【心筋梗塞】より


[心筋梗塞の疫学]
 日本では心筋梗塞を含む心疾患による死亡は1950年以来,増加の傾向にあり,58年以来,悪性新生物や脳血管疾患に次いで3位を占めるようになり,さらに85年以降は脳血管疾患を抜いて第2位となっている。このなかで,狭心症や心筋梗塞などの虚血性心疾患の増加は著しく,50年に人口10万人に対して約10人であったものが,94年には約50人と5倍以上となり,心臓疾患による死亡全体の約3割になる。この増加は,1980年代までは生活の変化によって冠状動脈の硬化や血栓症が増加したことに帰因するが,近年はおもに高齢者における死亡数の増加による。…

【心臓】より

…心筋を養う冠状動脈に硬化症やスパズム(痙攣(けいれん))が起こり,心筋の好気性代謝に必要とする酸素が十分供給されない場合は,嫌気性代謝が主となりエネルギー産出は著しく減少し,心筋障害が進行する。これは臨床的には狭心症や心筋梗塞(こうそく)の発症につながる。心筋
[冠状循環coronary circulation]
 心臓を養う冠状動脈coronary arteryは大動脈基部から左右2本出て心外膜下に入る。…

【動脈硬化】より

…それ以後も脳卒中は悪性新生物(癌)に次いで第2位を占めている。したがって日本人の動脈硬化性疾患についての疫学的研究は,脳卒中に関してのものが主役を演じざるをえなかったということができるし,このことはアメリカやヨーロッパ諸国においては狭心症心筋梗塞(こうそく)などの虚血性心疾患についての疫学的研究が主役であるのと同じ理由をもつ。日本における近年の虚血性心疾患と脳卒中の死亡率の頻度をみると,虚血性心疾患による死亡は1950年は年間9.9人(人口10万人対。…

※「狭心症」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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