アメリカのスーパーマーケット・チェーン。正称はグレート・アトランティック・アンド・パシフィック・ティー・カンパニー。紅茶輸入専門の雑貨店からスタートし、当初グレート・アメリカン・ティー・カンパニーと名のる。1859年、それまで皮革の輸入に従事していたギルマンGeorge F. Gilman(1826―1901)と、その販売をしていたハートフォードGeorge Huntington Hartford(1833―1917)が、輸入業務に携わる仲介人の経費と利益の相当部分を不要にすることで、市価よりも低価格で輸入茶を供給できるようにしようという発想から、共同事業の輸入茶専門店をニューヨークに開業したことに始まる。さらにほかの商品も同様に値下げして売ることができると考え、食料品を取扱い商品のなかに加え、食料品店としての本格的な営業活動を開始したのである。1869年アメリカ大陸横断鉄道の開通とともに現在の社名に変更、中間業者を排除した大量仕入・低価格販売の小売業者として躍進した。
アメリカにおけるチェーン・ストアの発展に多大な貢献をなしたA&Pの成長起点は、1912年に開発・展開した「エコノミー・ストア」にある。エコノミー・ストアとは、従来の配達と掛売り制度を現金持ち帰り主義に改め、経費の徹底的節減を図ることによって廉価販売システムを採用したものである。つまり、運営方式が標準化され、強力な本部組織によって集中的に管理運営されるチェーン・ストア経営の原型を生み出したものであり、1913年の初頭には585店、1920年から1925年に至る5年間には1万店に近い店舗を増設、1930年代までには約1万5000店もの小型店舗を全米に展開し繁栄の時代を築いていた。
しかし、1930年代の世界恐慌および反チェーン・ストア運動の高まりとともに、不公正な取引を排除するロビンソン・パットマン法The Robinson-Patman Act(1936)が制定され、店舗数の増加にあわせた累進課税と、営業する州の数を掛けた税額の適用を受け、企業経営は大打撃を被る。おりしも1930年代のアメリカ食品小売業界には、A&Pの10倍もの店舗規模をもつ、セルフサービス方式を導入した本格的な食品スーパーマーケットがニューヨーク州のジャマイカ市で誕生。しかし、A&Pはスーパーマーケットの人気を一時的なものとしてとらえたため、時代変化の兆候を見誤り、対応が遅れることとなる。1940年代にはスーパーマーケットの台頭により、2000店舗が閉鎖に追い込まれ、A&Pの小型店は年間1000店舗という単位で市場から姿を消した。その後スーパーマーケット業態へ転換するも、1950年代、1960年代は食品スーパー市場へ新規参入する競合他社との激しい価格競争の波に飲まれ、1970年代には1890店舗にまで縮小、莫大(ばくだい)な設備投資と人件費の高騰によって業績悪化に陥り、ついに1979年、当時の西ドイツ最大のスーパーマーケット・チェーン、テンゲルマンTengelmannに買収され、その傘下となった。A&Pの2001年度の実績は、総店舗数752によって売上高は約106億ドルを計上し、全米小売業第26位にランクされていた。
[角田正博]
2005年にA&Pカナダを同国でスーパーマーケット、ドラッグストアを経営するメトロ社METRO Inc.に売却。八つのプライベート・ブランド(America's Choice、Hartford Reserveなど)をもち、コネティカット、マサチューセッツなど8州で435店舗を展開、従業員数は約4万8000。2008年度の売上高は95億1620万ドル、赤字額1億3990万ドル。
[編集部]
アメリカにある世界最大の通信社。Associated Pressの略。1848年、ニューヨークの新聞6社が、入港する船舶からヨーロッパのニュースを共同取材するため、ハーバー・ニュース・アソシエーションを設立したのがその起源である。当時はニューヨークAP、ウェスタンAP(シカゴ)など五つのAP組織が各地域に分立していたが、1900年に今日のAPがニューヨークに結成された。しかし、国際ニュースの交流は19世紀後半から第一次世界大戦にかけて、ロイター、ウォルフ、アバスのヨーロッパ系通信社が独占排他的な地域協定を結び、世界市場を3分割していた。
APもロイターの支配下にあり、内外ニュースの送受信の自由を奪われていたが、初代支配人メルビル・ストーンやケント・クーパーらの努力で、1927年この協定を破棄、世界通信社としての第一歩を踏み出した。第二次世界大戦後、アメリカの隆盛とともに世界最大の通信社となった。「正確、公平、品格」を社是とする。1941年放送サービス開始、1994年にはAPTV(1998年にAPTNに改組)を設立し放送会員社の比重が高まった。従業員3700人を擁し内外300以上の地点で取材活動を行っている。しかし、1990年代後半から新聞をはじめ従来メディアの衰退で契約社が脱落し、大幅な収入減にみまわれた。
[小松原久夫]
正称はグレート・アトランティック・アンド・パシフィック・ティー会社The Great Atlantic and Pacific Tea Company Inc.。アメリカの世界有数の食料品・雑貨中心の小売企業,チェーン・ストア。本社ニュージャージー州モントベール。1859年ギルマンG.F.Gilman(1826-1901)の小売店としてニューヨークで創業されたアメリカ小売業界の老舗。63年グレート・アメリカン・ティー社と名乗り,69年現社名に変更。78年経営をハートフォードJ.H.Hartfordに任せた。輸入茶のメール・オーダーによる廉価販売で発展。その後,取扱品目をあらゆる食料品に広げる一方,小売店舗も東部諸州から,大陸横断鉄道の開通(1869年に中央大陸横断鉄道が完成,その後,北部と南部も完成)後は西部諸州にも多数展開,世界におけるチェーン・ストア発達の先駆となった。1913年以降〈エコノミー・ストア〉という新しい形態の店舗を多数展開,30年には店舗数は1万5000余にもなったが,30年代初めのスーパーマーケットの出現後は店舗数を減らした。64年にシアーズ・ローバック社に抜かれるまで世界最大の小売企業であった。その後73年にセーフウェー社にも抜かれ,スーパーマーケット首位の座も失った。70年代の初めから業績改善のためにいろいろ手を打ってきたがうまくいかず,企業規模は縮小の一方で,78年には西ドイツの商事会社テンゲルマンTengelmannグループに買収され,現在はその傘下にある。2004年2月期末で696の店舗をもつ。その大半がスーパーマーケットのA&Pである。店舗は,ニューヨーク,ニュージャージー,ペンシルベニアの3州に集中しているが,カナダにもある。売上高108億ドル(2004年2月期)。
執筆者:西村 哲
アメリカの通信社。Associated Pressの略称で,アメリカ最大の国際的通信網をもつ。1848年ニューヨーク港に入港する船舶からヨーロッパのニュースを共通取材するため,ニューヨークの六つの新聞社が共同して結成したハーバー・ニュース・アソシエーションHarbor News Associationがその起りで,57年改組してニューヨークAPとなった。その後アメリカ国内にはニューヨークAPと結ぶいくつかの通信社が生まれたが,59年シカゴに結成されたウェスタンAPがもっとも強大となり,92年改組してAPと改称,今日の基礎を築き,1900年本社をニューヨークに移して現在に至っている。当初,外国ニュースの入手はヨーロッパの通信社に依存していたが,第1次世界大戦後対外進出を開始,国際的地位を確立していった。アメリカの新聞および放送局を基盤にした組合組織の非営利法人で,政府とはいっさい関係なく,その経費はすべて加盟社が分担する。日本の共同通信社その他各国の通信社にはこの組織にのっとったものが多くある。メンバーには有力大新聞,または大きな企業グループが多い。1966年,ロイターの経済ニュースに対抗するため,《ウォール・ストリート・ジャーナル》紙を出しているダウ・ジョーンズ社(DJ)と提携,経済,金融,相場などのニュースを流す,国際経済専門のAP・DJ経済通信社をつくった。日本では共同通信社がその独占配信権を持ち,ロイター経済ニュースの独占配信権を持つ時事通信社と競争している。94年からテレビ映像サービスも始めている。現在,ロイターに対抗できる唯一の国際通信社である。
執筆者:殿木 圭一+香内 三郎
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「グレート・アトランチック・アンド・パシフィック・ティー」のページをご覧ください。
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出典 (株)朝日新聞出版発行「知恵蔵」知恵蔵について 情報
…広くニュースを収集,配布するためには大きな通信網を整えなくてはならないから,大きな組織を必要とする。APとUPI(アメリカ),ロイター(イギリス),AFP(フランス),タス(現在イタル・タス,ロシア)の5社は,世界のニュースを収集し,これを多数の国々に配布する通信社として,世界通信社World News Agencyと分類されている。その他,各国には一つないしそれ以上の通信社があり,それぞれ自国内ないし世界に通信網を張っているが,その多くは,世界ニュースについては,多少とも前記5社に依存している。…
※「AP」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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