血液脳関門(読み)ケツエキノウカンモン(英語表記)blood brain barrier

デジタル大辞泉 「血液脳関門」の意味・読み・例文・類語

けつえきのう‐かんもん〔ケツエキナウクワンモン〕【血液脳関門】

脳血管と脳の間の物質移動を選択的に制限する仕組み。ブドウ糖アミノ酸などの栄養素ニコチンアルコールなどは通すが、高分子たんぱく質脂質リン酸などは通しにくい。BBB(blood-brain barrier)。

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改訂新版 世界大百科事典 「血液脳関門」の意味・わかりやすい解説

血液脳関門 (けつえきのうかんもん)
blood brain barrier

略称BBB。血液-中枢神経(脳と脊髄)組織間の物質(酸素炭酸ガス,水を除く)の移動速度は他の組織にくらべて著しく低い。色素,毒素ウイルスなどはまったく透過しない。このことから,中枢神経の毛細血管と神経細胞の間には,なんらかの透過障壁があると考えられており,この障壁を血液脳関門という。血液脳関門は中枢神経細胞の外液を恒常的に保つための保護機構と考えられている。しかし一方,多くの抗生物質などがこの関門を通りにくいことは,中枢神経感染症治療の妨げともなっている。血液脳関門は出生時には発達不十分であり,成長とともに完成する。脳でも,脳室周囲器官(松果体,脳下垂体後葉,最後野,視神経上稜,脳弓下器官)にはこの関門は存在しない。これらの器官のあるもの(たとえば脳下垂体後葉)は神経細胞が分泌した物質を血中に入れる働きをもち,あるもの(たとえば最後野)は化学受容器である。したがって,それぞれの機能を果たすためには血液脳関門がないことが必要である。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「血液脳関門」の意味・わかりやすい解説

血液脳関門
けつえきのうかんもん
blood-brain barrier

正常な脳組織には血液中のある物質,たとえば脳にとって有害な物質が脳内に侵入するのを防ぐ機構があり,毛細血管の内膜の働きによるとされている。この機構を血液脳関門と呼ぶ。胎児新生児ではこれが十分働かない。新生児核黄疸は,正常では入らないはずのビリルビンが血中から脳内に入ることによって起る。

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栄養・生化学辞典 「血液脳関門」の解説

血液脳関門

 血液から脳への物質の移行は選択性が高い.この高い選択性をもって物質を脳へ取り込ませる機構.

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世界大百科事典(旧版)内の血液脳関門の言及

【脳】より

…麻酔剤や睡眠剤,トランキライザーなどの薬剤が脳に作用するのは,脳組織の働きがそもそも多彩な化学的過程に支えられているためである。
[血液脳関門]
 脳組織と血管の間には物質の移動を妨げる一種の関門がある。グルコースや酸素は脳内に自由に移行するが,一般に高分子のタンパク質や脂質,アミノ酸,リン酸,ナトリウムイオンNaなどは脳内に入りにくい。…

※「血液脳関門」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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