改訂新版 世界大百科事典 「枠組壁工法」の意味・わかりやすい解説
枠組壁工法 (わくぐみかべこうほう)
現在,北米でごくふつうに行われている木造構法(プラットフォーム構法と呼ばれる)を下敷きにし,これに部分的に日本化の試みを加えたもの。1974年この工法の構造方法に関する技術基準が建設省告示として公布され,この工法でだれでも自由に建てることが許認された。なお,〈枠組壁工法〉という呼び方はこの告示で定まった。北米のプラットフォーム構法は,その源をバルーン構法に求めることができる。バルーン構法は,1833年にシカゴのセント・メアリー教会を大工棟梁A.D.テイラーが建てたときから発するといわれ,その特徴は,規格化された小断面の製材を壁と床に細かい間隔で配置し,継手と仕口を釘打ちで構成する点にあったが,この特徴は今日も生きている。ただスタッド(日本では縦枠と呼んでいる)を1階から2階まで1本で通す点が後年難点とみなされ,スタッドを各階ごと別々(管柱式)にしたプラットフォーム構法が1920年代ころから出現した(図)。当時は壁,天井は木ずり(狭い幅の木材の板を横に張ったもの)下地がふつうであったが,50年代から木ずりに代わって合板,セッコウボードなどのボード類が登場し,日本の枠組壁工法はこの流れをくんでいる。
枠組壁工法は,〈木材で組まれた枠組に構造用合板その他これに類するものを打ち付けた床及び壁により建築物を建築する工法〉と建設省告示で定義され,現在,地階を除く階数が3以下の建物の構造耐力上主要な部分に適用することが許されている。その特徴をあげれば次のとおりである。(1)使用する製材の断面はわずかに7種類で,その乾燥時の断面は38×64,38×89,38×140,38×184,38×235,38×286,89×89(単位はmm)。このうち,主として壁の構成に用いられる38mm×89mm(2インチ×4インチ)の断面が,北米で2×4(ツーバイフォーtwo by four)と呼ばれ,その使用量がもっとも多いところから,日本でこの工法をツーバイフォー工法と俗称するようになった。なお,上述の諸断面はJASで定められているが,北米の製材規格寸法と斉合している。(2)継手や仕口を構成するために,部材の端部や中間部に溝や突起を加工することはせず,製材工場で製材されたままのものを釘(長さが同程度の場合,日本の在来釘よりも太い)打ちして継手,仕口を構成する(補助的に緊結用金物を使用することがある)。(3)壁や床の仕上げの下地に構造用合板その他のボード類を用いる。したがって壁においてはそれらのボードがスタッドの両面に張られるので,スタッドは隠れてしまい,目に触れることはない(この方式を大壁式という)。
執筆者:杉山 英男
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報