MVRDV(読み)えむぶいあーるでぃーぶい

日本大百科全書(ニッポニカ) 「MVRDV」の意味・わかりやすい解説

MVRDV
えむぶいあーるでぃーぶい

3人の建築家が主宰するオランダの設計集団。ユニットの名前はメンバーであるビニーマースWiny Maas(1959― )、ヤコブ・ファン・ライスJacob van Rijs(1964― )、ナタリー・デ・フリースNathalie de Vries(1965― )の頭文字を並べたものである。

 マースはオランダ南部のスヘンデル生まれ。デルフト工科大学を卒業後、レム・コールハースの主宰するOMA(Office for Metropolitan Architecture)に勤務。ウィーン工科大学、エール大学などで教鞭をとる。ファン・ライスはアムステルダム生まれ。デルフト工科大学を卒業後、マルティネス・ラペーニャ&トーレス、ファン・ベルケル・アンド・ボス、OMAなどの建築事務所に勤務。デルフト工科大学、ベルラーヘ研究所などで教鞭をとる。デ・フリースは、フローニンゲン州アピンヘダム生まれ。デルフト工科大学を卒業後、マルティネス・ラペーニャ&トーレスやメカノーなどの建築事務所に勤務。ロンドンAAスクール(Architectural Association School)、デルフト工科大学、ベルラーヘ研究所、ベルリン工科大学などで教鞭をとる。

 1991年、3人で応募したコンペで勝利したことを契機に、MVRDV設立。主要なメンバーがOMA出身者であり、レム・コールハースの強い影響を受けている。MVRDVの手法は、法規、予算、要求など、条件をできるだけデータ化し、ダイアグラムをそのまま形態にすることが大きな特徴である。したがって、徹底して内部のプログラムから操作を行うために、外観を整えるという意識はない。若手でありながら、多くのコンペに入賞し、多数の都市計画のプロジェクトにかかわっている。

 ビラVPRO(1997)は、床、壁、屋根をねじ曲げながら連続させ、コールハースのユトレヒト大学付属施設エデュカトリアム(1997)を想起させる。ダブル・ハウス(1997)は直方体の住宅で、2家族の空間をパズルのように組み合わせながら、平等性に配慮している。アムステルダム郊外のオスドルブの集合住宅「100WoZoCo's」(1997)は、法規制のために、100戸のうち87戸しか収容できない状況を利用し、残り13戸のボリュームを壁から大きく突き出させた。積み重ねは彼らの重要な手法である。オフィスつき集合住宅のプロジェクトでは、庭つきの戸建て住宅を積み重ね、木を植えた細長いテラスが空中にあちこち飛びだす。ハノーバー万博オランダ館(2000)では、8種類のランドスケープを積層させた。新潟県十日町(とおかまち)市松代(まつだい)のまつだい雪国農耕文化村センターのプロジェクト(2003年竣工)では、複数の斜路が浮きあがった展示室を支えている。

 データ至上主義のデザインは、都市計画においても展開される。特にデータタウン(1999)は、仮想の都市シミュレーションである。MVRDVは自律型の高密度都市を設定し、生活に必要な統計的な数字が導く、驚くべき空間の可能性を提示した。例えば、都市の全住民が住む巨大な立方体建築や、高さにして100キロメートル以上に及ぶ3834の階層に積み上げられた森が出現する。一見荒唐無稽だが、コールハースと同様、MVRDVがこうしたプロジェクトに興味をもつのは、オランダが人口密度の高い国であることと無関係ではない。3D cityのプロジェクト(2002)では、高速道路と建物を複合させたり、杭(くい)基礎を梁(はり)に置き換えて既存建物の真下に空間を拡張する。ほかにも、空軍の立ちのいた跡地を利用するフライトフォーラム(1998)や高層化された養豚場のピッグシティ(2001)など、ゲーム感覚の実験的な都市が提案された。

 そのほかの主な作品にロッテルダム2045年都市計画(1995)、RVUオフィス(1997、ヒルフェルスム)、ブラバンドシティ2050(1999、オランダ南部)、ロッテルダムのポートシティ・プロジェクト(2001)、集合住宅SILODAM(2002、アムステルダム)など。著書に『FARMAX』(1998)、『Metacity/Datatown』『100WoZoCo's』(1999)などがある。

[五十嵐太郎]

『FARMAX; Excursions on Density (1998, 010 Publishers, Rotterdam)』『Metacity/Datatown (1999, 010 Publishers, Rotterdam)』『100WoZoCo's (1999, Aedes Galery, Berlin)』『Costa Iberica; Up Beat to the Leisure City (2000, Actar, Barcelona)』『Nordic Enterprise; MVRDV (2001, Actar, Barcelona)』『Jaime Salazar ed.MVRDV at VPRO (1998, Actar, Barcelona)』

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

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