アブラハヤ(その他表記)Moroco steindachneri

改訂新版 世界大百科事典 「アブラハヤ」の意味・わかりやすい解説

アブラハヤ
Moroco steindachneri

コイ目コイ科の淡水魚。体表に粘液が多く,手で握ったときの感触がぬるぬるするところからつけられた名まえであろう。アブラケ,アブラメなどアブラのつく異名が多い。尾瀬沼でボヤと呼ばれるものも本種。ほぼ琵琶湖,淀川水系以東・以北の本州に分布し,山地の浅い湖や湧水のある細流などのよどみにすむ。全長7.5~16cm,体は細長く,うろこは細かい。体色は緑色を帯びた黄褐色で背面は濃く,腹面は淡い。体側には側線に沿って暗色の縦帯が走り,その縦帯の上下には不規則な黒点が散らばっている。アブラハヤの名称もこの体色にちなんだとも考えられる。主として泥または砂泥底の中層または底層近くを泳ぐが,その動作はウグイオイカワなどより不活発。雑食性水底にすむ小動物などを食べる。食用となるが美味ではなく,イワナヤマメなど渓流釣りの釣人からは外道(げどう)として扱われることが多い。アブラハヤ属には日本ではほかに本州中部以西,四国,九州の山地の渓流などにタカハヤM.jouyi(全長7.5~13cm),北海道の平地にヤチウグイM.percnurus sachalinensis(全長10~14cm)などが分布する。アジア大陸にも近縁種,数種を産する。
執筆者:

出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

日本大百科全書(ニッポニカ) 「アブラハヤ」の意味・わかりやすい解説

アブラハヤ
あぶらはや / 油鮠
[学] Moroco steindachneri

硬骨魚綱コイ目コイ科に属する淡水魚。アブラバエ、アブラメ、ニガバヤ、クソバイ、ノメッチョなどの地方名がある。琵琶湖(びわこ)淀川(よどがわ)水系以東および以北の本州に分布している。全長10~15センチメートル程度。全体に黄褐色で、鱗(うろこ)は小さく体表がぬるぬるしている。静岡県と富山県以西に分布する近縁のタカハヤM. jouyiとよく似ているが、アブラハヤは尾柄(びへい)が低く、側線上部の横列鱗(おうれつりん)数(背びれ基部から側線までの鱗数)が多いので識別できる。川の上流から中流までのよどみに生息するが、タカハヤと共存している川では中流のほうに偏る。またヤマメ、アマゴ、ウグイ、カワムツ、オイカワに対しては、食物獲得競争で両種ともつねに弱者で、共存地では川岸などの条件の悪いほうに集中している。両種とも雑食性で、昆虫類と藻類を主食とする。春から夏に流れの緩い砂礫底(されきてい)に産卵する。食用になるがまずい。北海道の池沼や湿原の流れには同属のヤチウグイM. percnurus sachalinensisが生息する。

[水野信彦]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「アブラハヤ」の意味・わかりやすい解説

アブラハヤ
Phoxinus lagowskii steindachneri

コイ目コイ科の淡水魚。体長 10cm。背面は暗褐色,腹部は白く,体側には暗色帯がある。山地の池や細流にすむ。雑食性。産卵期は 4~7月。青森県から福井県および岡山県に分布する。

出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報

今日のキーワード

仕事納

〘 名詞 〙 年の暮れに、その年の仕事を終えること。また、その日。《 季語・冬 》[初出の実例]「けふは大晦日(つごもり)一年中の仕事納(オサ)め」(出典:浄瑠璃・新版歌祭文(お染久松)(1780)油...

仕事納の用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android