コート(Henry Cort)(読み)こーと(英語表記)Henry Cort

日本大百科全書(ニッポニカ) の解説

コート(Henry Cort)
こーと
Henry Cort
(1740―1800)

イギリスの製鉄の発明家。彼の発明したパドル法は、ダービーコークス高炉とともに、製鉄業の燃料を木炭から石炭に完全に移行させた。スウェーデンの棒鉄(錬鉄)の輸入業者であったが、国内銑鉄から石炭を使って優秀な錬鉄を製造することを思い立った。それまでは精錬炉で木炭と銑鉄を装入し、銑鉄を溶かし酸化脱炭して錬鉄に変えてきたが、石炭は硫黄(いおう)を含み、鉄に入って汚してしまうので燃料にできなかった。彼は銑鉄の再溶解に使用されていた石炭焚(だ)き反射炉で銑鉄を精錬することを考えた。反射炉では火格子室で燃やされる石炭の火炎が溶解室で反射熱によって銑鉄を溶解し、精錬し、廃ガスは高い煙突から排出され、石炭は直接鉄には触れない。しかし、銑鉄中の炭素の減少につれて融点が上がり、溶融状態を失い、粘い鉄(半溶鉄)になるので、鉄棒でこれをパドル(攪拌(かくはん))して精錬を促進しなければならない。それでパドル法とよばれる。コートはこの方法を確立して、1784年に特許をとった。この方法は同時に彼が採用した蒸気機関による圧延法と結合してパドル・圧延法ともよばれ、鉄の安価大量の製造を可能にし、木炭精錬炉と水車ハンマーの牧歌的製鉄を終わらせ、鉄の構造材への大量使用の時代を開幕させた。

中沢護人

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

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