学校掃除(読み)がっこうそうじ

日本大百科全書(ニッポニカ) 「学校掃除」の意味・わかりやすい解説

学校掃除
がっこうそうじ

わが国の学校では、伝統的に児童・生徒による掃除が行われている。この伝統は、江戸時代の寺子屋中世の寺院教育にまでさかのぼることができる。しかし、諸外国の学校では、かならずしも生徒に掃除をさせていない。世界の国々は、学校掃除については、「清掃員型」「清掃員・生徒型」「生徒型」の3類型に分けられる。

 第一の清掃員型とは、清掃員が学校の掃除を行い、生徒には学校の掃除をさせない国のことをいい、欧米諸国がこの類型に属する。欧米諸国では、古来、掃除は奴隷の仕事とみなされ、このような伝統的な掃除観が清掃員型を形成する重要な要因をなしている。第二の清掃員・生徒型とは、清掃員を主としながらも、生徒にも学校掃除を行わせている国のことをいい、社会主義諸国がこの類型に属する。これらの国々では、清掃員による学校掃除という西欧の伝統に従いながらも、教育と労働結合という観点から生徒にも掃除をさせているのである。第三の生徒型とは、生徒に学校掃除を行わせている国々のことをいい、日本を初めとするアジアの仏教国、または仏教的伝統をもつ国々がこの類型に属している。これらの諸国では、掃除を開悟手段、人間修行の重要な方法とみなす仏教的掃除観が、学校掃除の背景をなしている。すなわち、掃除は単に身辺を清潔にするだけでなく、それは心の塵(ちり)や垢(あか)を取り除く「心の掃除」に通じるものをもっている。また、わが国の掃除は穢(けがれ)や不浄を忌む神道の清浄感にも深く根ざしていて、学校掃除の背景には、神道の影響もみられる。

 なお、学校掃除には、清潔の習慣育成、公共心の育成、健康の増進勤労の体験などの教育的効果も認められる。つまり、掃除は人間形成にとってきわめて重要な意義をもつものであり、児童・生徒による学校掃除は日本の教育の伝統的な特色をなしている。

[沖原 豊]

『沖原豊著『学校掃除』(1965・学事出版)』

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

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