硫化カリウム(読み)りゅうかカリウム(英語表記)potassium sulfide

改訂新版 世界大百科事典 「硫化カリウム」の意味・わかりやすい解説

硫化カリウム (りゅうかカリウム)
potassium sulfide

カリウム硫黄の化合物で,一硫化物のほかに多硫化物が知られている。

化学式K2S。純粋なものは無色結晶性粉末。融点840℃。比重1.805(14℃)。結晶はアンチ蛍石型構造,格子定数a=7.391Å。K-S原子間距離3.18Å。空気中で容易に酸化されて黄色を呈する。潮解性で,水に易溶。エチルアルコールグリセリン液体アンモニア可溶水溶液は強いアルカリ性を呈し,酸によって硫化水素を発生する。水溶液から無色斜方晶系の5水和物が得られる。5水和物は融点60℃。150℃で2水和物に変わり,水素気流中で脱水すると無水和物に変わる。12水和物も知られている。純粋な無水和物は液体アンモニア中で金属カリウムと硫黄とを反応させて得るが,水和物を乾燥水素気流中で脱水しても得られる。水酸化カリウムに硫化水素を反応させた水溶液から5水和物が得られる。工業製品は炭酸カリウムと硫黄を共融してつくられ,ポリ硫化物とその酸化によって生じたK2S2O3を含み,黄ないし黄緑色を呈し,硫肝と呼ばれる。角質を溶かすので皮膚病の治療薬として用いられる。

化学式K2Snn=2,3,4,5)。真空中で一硫化カリウムと計算量の硫黄との融解反応で得られ,いずれも水,エチルアルコールに可溶の有色潮解性結晶。K2S2は赤黄色六方晶系の結晶,融点471℃。K2S3黄褐色,融点252℃。K2S4赤褐色,融点145℃。K2S5はだいだい色,融点206℃。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「硫化カリウム」の意味・わかりやすい解説

硫化カリウム
りゅうかかりうむ
potassium sulfide

カリウムと硫黄(いおう)の化合物。カリウムの一硫化物である。単に硫化カリウムというと普通は一硫化物をさし、他はポリ硫化物とよばれる。硫化ナトリウムと同様、硫化水素カリウム溶液に当量の水酸化カリウム溶液を作用させると五水和物を得ることができる。水素気流中で加熱脱水すると無水和物となる。そのほか、カリウムと硫黄を直接あるいは液体アンモニア中で反応させる方法、硫酸カリウム炭素または水素で還元する方法がある。工業的には炭酸カリウムと硫黄を二対一に混合し、融解して製造する。無色、潮解性の結晶性粉末。空気中で容易に酸化されて黄色を呈する。工業製品(硫肝(りゅうかん))はポリ硫化物K2Sx(xは2、3、4、5など)を含むため黄緑色ないし褐色を呈する。水のほかエタノール(エチルアルコール)、グリセリン、液体アンモニアに溶ける。水溶液は強アルカリ性で、酸を加えると硫化水素を発生する。ほかに二および12水和物がある。角質を溶かす作用があるので皮膚病の治療に用いられる。

[鳥居泰男]

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化学辞典 第2版 「硫化カリウム」の解説

硫化カリウム
リュウカカリウム
potassium sulfide

K2S(110.26).カリウムと硫黄とを直接加熱すると無水物が得られる.また,水酸化カリウムの水溶液に硫化水素を飽和させ,得られた硫化水素カリウムの水溶液に等モルの水酸化カリウム水溶液を加えて濃縮すると五水和物が得られる.五水和物を水素気流中で熱すると無水物となる.無水物は無色の等軸晶系結晶.密度1.80 g cm-3.融点840 ℃.潮解性で,空気中では酸化されてチオ硫酸カリウムと多硫化カリウムを生じ黄色を呈する.水に易溶,エタノールに可溶,エーテルに不溶.酸に溶けて硫化水素を発生する.五水和物は無色の斜方晶系結晶.60 ℃ で融解し,150 ℃ で二水和物となる.二水和物は水,エタノールに可溶,エーテルに不溶.ほかに二,三,四,五硫化カリウムがある(多硫化カリウム).分析試薬,脱毛剤,線香花火の材料,銅板めっき,肥料,染色,農薬,入浴剤,皮膚病薬などに用いられる.[CAS 1312-73-8]

出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「硫化カリウム」の意味・わかりやすい解説

硫化カリウム
りゅうかカリウム
potassium sulfide

化学式 K2S 。液体アンモニア中で硫黄とカリウムを反応させて得られる。無色立方結晶であるが,工業製品はポリ硫化カリウムを含み,黄緑色を呈し,硫肝と呼ばれる。吸湿性が強く不安定。衝撃あるいは急速な加熱により爆発することがある。融点 840℃。水に易溶。水溶液は強アルカリ性を呈する。5水塩は無色斜方晶系柱状晶である。硫化水素臭がある。空気および光に触れると黄ないし赤黄色に変色する。

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