鏡・鑑・鑒(読み)かがみ

精選版 日本国語大辞典 「鏡・鑑・鑒」の意味・読み・例文・類語

かがみ【鏡・鑑・鑒】

〘名〙 (「影見(かげみ)」で、「かが」は「かげ」の交替形という)
① 物の姿や形を映し見る道具。古くから祭具として用いられたため、大切なもの、清く澄むこと、貴く美しいもの、静かな水面などのたとえにも用いられた。古くは青銅白銅、鉄などで作り、表面に水銀に錫を混ぜたものを塗ってみがいてある。形は方円、八つ花形などがあり、裏面は文様を鋳出し、中央につまみがあり、紐をつけた。現在のものはガラス板の裏面を銀めっきなどで加工して作る。
※古事記(712)下・歌謡「斎杙(いくひ)には 加賀美(カガミ)を掛け 真杙(まくひ)には 真玉(またま)を掛け」
源氏(1001‐14頃)総角「四方の山のかがみと見ゆる汀の氷、月影にいとおもしろし」
② 特に、鏡に映る影をいう。
※源氏(1001‐14頃)薄雲「うへも、年頃御かがみにもおぼしよる事なれど、きこしめしし事の後は、またこまかに見たてまつり給ふつつ」
手本模範。亀鑑(きかん)
万葉(8C後)二〇・四四六五「見る人の 語りつぎてて 聞く人の 可我見(カガミ)にせむを」
徒然草(1331頃)一「人の鏡ならんこそいみじかるべけれ」
④ 様子を見ること。また、その者。見張り。
※玉塵抄(1563)二「三人をみやこのかかみにせられた」
※源氏(1001‐14頃)初音「かねてぞ見ゆるなどこそ、かかみの影にも語らひ侍りつれ」
酒樽(さかだる)のふた。円形で古鏡に似ているのでいう。
※細川忠興文書‐寛永七年(1630)五月二二日・細川忠興書状「樽之かかみをうちわりふみわり仕体」
浄瑠璃・鑓の権三重帷子(1717)上「四斗入りの明樽(あきだる)〈略〉ふみつくれば底もかがみもすっぽりと抜けたるを」
⑦ 鞍(くら)、鐙(あぶみ)などで、表面を鏡地または銀や金銅で包んだもの。鏡鞍、鏡鐙、鏡轡など。
※餝抄(1238頃)下「雲珠。有伏輪、上透唐草、下鏡」
馬具の一つ。轡(くつわ)の面掛(おもがい)を受ける金具の大形のもの。鏡板(かがみいた)
※弓張記(1450‐1500頃か)「左の口わきにくつわのかかみあてるやうにおるべし」
⑨ 「かがみもの(鏡物)」の略。
⑩ 底にガラスを張った楕円形の小桶。魚を突く時などに用いるめがね。箱めがね。
※彼岸過迄(1912)〈夏目漱石〉須永の話「船頭は此妙な道具を鏡(カガミ)と称へて」
⑪ 違いないこと。江戸時代小間物屋の語。
洒落本・大通契語(1800)「いい甲だが、おしむらくは今少しふが切れると、いいぶんはねへ、しかし三分位のもなあ鏡(カガミ)さ」
⑫ 舞台用語。扉や襖(ふすま)障子を開けた奥に、目かくしに立てておく張り物。

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