日本大百科全書(ニッポニカ) 「カレリア(民族)」の意味・わかりやすい解説
カレリア(民族)
かれりあ
Karelians
ロシア連邦北西端のカレリア共和国およびフィンランド東部のカレリア県を中心に居住する民族。居住地は大部分が針葉樹林に覆われ、湿地も広く分布している。カレリア人はフィン人、エストニア人などとともに、ウラル語族のフィン・ウゴル語派に属し、カレリア語を話す。総人口は約30万で、ロシア連邦のカレリア共和国内に約8万(1995)が住む。歴史は古く2000年以上に達するが、7世紀ごろ現在のカレリアであるラドガ湖周辺に定着し、以来狩猟と漁労をおもな生業としてきた。カレリア地方は、北ヨーロッパの対立する二つの勢力、東のロシアと西のフィンランドおよびスウェーデンの衝突点であったため、長い歴史を通じて国際紛争が絶えず、侵略と征服とが繰り返されてきた。宗教はロシア正教だが、アニミズムの影響も根強く、結婚式や葬儀には長くて念入りな儀礼が伴う。伝統的に家父長の権限の強い大家族制をとっており、工業化をあまり好まず、現在でも狩猟や漁労、林業、農業などで生計をたてている。口頭で歌い継がれてきたフィンランドの民族叙事詩『カレバラ』(カレワラともいう)には、フィン人と同様にカレリア人の歴史や、かつての生活様式が詳しく語られている。
[片多 順]