アニミズム(英語表記)animism

翻訳|animism

デジタル大辞泉 「アニミズム」の意味・読み・例文・類語

アニミズム(animism)

自然界の諸事物に霊魂・精霊などの存在を認め、このような霊的存在に対する信仰。英国の人類学者タイラーは、これを宗教の起源とした。→アニマティズム

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精選版 日本国語大辞典 「アニミズム」の意味・読み・例文・類語

アニミズム

  1. 〘 名詞 〙 ( [英語] animism 「霊魂・生命」の意の[ラテン語] anima から ) 自然界のあらゆる事物に、霊魂があると信ずること。イギリスの民族学者タイラーが宗教の起源をこの語で説明した。有霊観。万物有魂論。〔音引正解近代新用語辞典(1928)〕

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改訂新版 世界大百科事典 「アニミズム」の意味・わかりやすい解説

アニミズム
animism

気息〉や〈霊魂〉を意味するラテン語のアニマanimaに由来し,〈さまざまな霊的存在spiritual beings(霊魂,神霊,精霊,生霊,死霊,祖霊妖精妖怪など)への信仰〉を意味する。

霊的存在の典型としての霊魂soulについてみると,それは人間の身体に宿り,これを生かし,その宿り場(身体)を離れても独自に存在しうる実体である。それは人間の物質的・身体的特質や機能にたいして精神的・人格的特質や機能を独立の存在としてとらえたものと言える。霊魂は物に宿っている限り,物を生かしているが,物が消滅し去っても独自に存在し続けると見られるから,超自然的supernaturalまたは超人間的存在superhuman being(s)とも呼ばれ,通常,普通の人には不可視的存在であるから霊的spiritualとされ,さらに人間と同じように喜怒哀楽の心意をもつと考えられるから人格的personalとされるのである。こうした意味での霊魂は,人間にのみ認められているのではなく,動物,植物,自然物自然現象にも宿るとされる。

このように諸生物,事物,現象に認められる霊魂群を一括して霊的存在と名づけ,この存在への信仰をアニミズムと規定し,これによって宗教文化の起源と本質を論じたのがイギリスの人類学者E.B.タイラーである。彼によれば,死,病気,恍惚,幻想とくに夢における経験を反省した未開社会の知的な人間は,身体から自由に離脱しうる非物質的で人格的な実体すなわち霊魂の存在を確信するにいたった。人間はこの霊魂の観念を類推的に自分の周囲の動植物や自然物にも及ぼすにいたり,ここにさまざまな霊的存在の観念とそれらへの信仰が成立した。したがって神霊,精霊,死霊などは,種々の対象や存在に結びつけて認められた霊魂にほかならない。霊魂や精霊の観念はのちに進化して多神教一神教へと展開した。以上のようなタイラーの学説は,その巧妙な説明で19世紀末の学者や文化人に感銘を与えたが,そのあまりにも個人心理学に依拠した主知主義的な解釈や進化主義的な態度は各方面から厳しく批判されることとなった。マレットR.R.Marettによるアニマティズムプレアニミズム)の主張などその例である。しかし,霊的存在への信仰(アニミズム)をもって宗教の本質とする彼の所説は,理論的に補強されながら今日に継承されている。

霊的存在の観念は複雑で多彩な展開を示す。それは人間・社会の幸・不幸や世界観,他界観と結びつけられて把握されることが多い。沖縄各地では幼児の病気や夜泣きはマブイウトシ(魂落し)に帰され,落とした霊魂を身体に付着させる儀礼が行われる。ある人の臨終に際し,親族が屋根に登り,または井戸の底に向かってその人の名を呼び,離脱しようとする霊魂を呼び戻そうとする魂呼びの風習は各地に見られた。かつて各地で行われた首狩りは,首に内在する霊魂を獲得することにより,狩りえた側の豊饒性を増大させることを目的としたとされる。死は身体からの霊魂の永久離脱を意味するが,死後の霊魂は天上,地上,地下などの他界に赴き,定められた時にこの世を訪れるものと信じられているところは少なくない。日本の正月や盆の行事はその例である。生霊(他人に憑いたり,障ったりする生者の霊魂),死霊,動物霊などは人間に憑いて健康を害させるとされる。日本各地で見られるキツネツキ,ヤコツキ,オサキツキなどは,動物霊憑依の例である。日本の霊魂・精霊に相当する霊的存在に,タイのピーphi,pii,ミャンマーのナットnat,インドネシアのアニートanito,マレーシアのハントゥhantuなどがある。これら霊的存在は民衆の宗教生活の主要部分に深くかかわり,畏敬・畏怖の対象とされていることが多い。

アニミズムは人間の霊魂の観念を人間以外の諸存在にも認め,それらと密接にかかわろうとする営為である。一般にアニミズムは原始(未開)社会や原始宗教の特質であり,現代社会や文明宗教においては,その意義と役割を著しく失うかのように考えられてきた。しかし現代の都市生活においても,現代の諸宗教においても,霊魂や死霊,祖霊など霊的存在と無関係の状況は見られない。現代の仏教,キリスト教,イスラムにおいても,その基層部分にはアニミズムが濃厚に見られる。この意味でアニミズムに宗教の本質を見ようとしたタイラーの主張は,今日なお正当性をもつ。
シャマニズム →祖先崇拝 →トーテミズム →フェティシズム
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百科事典マイペディア 「アニミズム」の意味・わかりやすい解説

アニミズム

あらゆる事物や現象に霊魂精霊が宿ると信じる観念・信仰。ラテン語のアニマanima(気息,霊魂)に由来。タイラーが〈霊的存在への信仰〉と包括的に定義し,上位神観念まで含めたが,一般には霊魂,精霊への信仰に限定される。→アニマティズム
→関連項目穀霊自然宗教宗教多神教汎神論マナ琉球文化

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山川 世界史小辞典 改訂新版 「アニミズム」の解説

アニミズム
animism

人間ばかりでなく動植物や無生物も霊魂を持っているという観念。未開宗教の最も基本的な観念の一つであるが,E.B.タイラー(1832~1917)がこれを宗教の起源とみなし,アニミズムから多神教をへて一神教に進化したと論じた仮説は,今日では支持されない。狩猟民にもあるが,農耕民のもとでことに発達。死者崇拝や精霊信仰もアニミズムにもとづくことが多い。

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山川 日本史小辞典 改訂新版 「アニミズム」の解説

アニミズム

原始宗教・民間信仰における霊的な存在への信仰をいう。イギリスの人類学者E.B.タイラーによれば,未開人は夢・幻想にもとづいて身体的な死とは別個の生命原理(霊魂=アニマ)を考え,死を霊魂の分離過程と解釈する。さらにこの生命原理は動植物・無生物・自然現象にも働くと拡大解釈され,霊魂の遍在が信仰される。文化進化主義においては,アニミズムを基礎に,死霊崇拝,呪物崇拝,精霊信仰,多神教,そして一神教という発展図式が描かれる。

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旺文社日本史事典 三訂版 「アニミズム」の解説

アニミズム
animism

あらゆる自然物や自然現象に霊魂の存在を認める考え方
ラテン語のanima(生霊)から出た語。日本神話の中にみられる草木がものを言うという考え方は好例。

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旺文社世界史事典 三訂版 「アニミズム」の解説

アニミズム
animism

原始宗教の一形態
自然界のあらゆる事物にアニマ(霊魂)があるとし,それを崇拝する信仰。

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世界大百科事典(旧版)内のアニミズムの言及

【もの(物)】より

…そのいくつかを列挙してみよう。(1)一般に原始社会では,動物や樹木はもとより山や岩のような無機物,さらには丹精をこめて造りあげられたり使い慣らされたりした道具など製作物にさえ霊魂が宿ると考えるアニミズム的思考が支配的である。古代の日本人が万物を〈葦牙(あしかび)の萌(も)え騰(あが)るが如く成る〉ものと見たり,古代ギリシア人が万物をその内蔵する原理によっておのずから生成(フュエスタイphyestai)する〈自然(フュシスphysis)〉とみたのも,そのなごりであろう。…

※「アニミズム」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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