ロシア連邦北西部にある共和国。面積17万2400平方キロメートル、人口77万1000(1999)。首都ペトロザボーツク。
[中村泰三・小俣利男]
1923年にカレリア自治ソビエト社会主義共和国Карельская АССР/Karel'skaya ASSRとして設立された。1940~56年カレロ・フィン社会主義連邦共和国を名のったが、1956~91年はもとの自治ソビエト社会主義共和国に戻っていた。ソ連崩壊(1991年12月)直前の1991年11月からカレリア共和国Республика Карелия/Respublika Kareliyaとなった。
[中村泰三・小俣利男]
西はフィンランド、北東は白海に接し、氷河地形の丘陵性平地が発達している。高緯度のわりに冬季の気温は高い(1月の平均気温は零下9~13℃)。タイガ(針葉樹林)地帯で、森林資源に富む。主要な工業は製材、木材加工業で、機械、アルミニウム精錬工業も発展している。農業は畜産が中心で、狩猟、漁業も行われる。オネガ湖、ラドガ湖、白海バルト海運河、白海などの水運が盛んで、サンクト・ペテルブルグとムルマンスクを結ぶ鉄道が縦断している。また、豊かな水資源を利用して、多数の水力発電所が建設された。ウラル語族のフィン・ウゴル語派に属するカレリア人の国であるが、住民はロシア人(73.6%)が大部分を占め、ほかにベラルーシ人(7.0%)、ウクライナ人(3.6%)などがおり、カレリア人は少数である。
[中村泰三・小俣利男]
カレリアはその地理的位置により、早くから東西両文化の影響を受け、とくにノブゴロドを通じてビザンティン文化と接触し、13世紀にはギリシア正教を受容した。13世紀末にカレリアをめぐるスウェーデンとノブゴロドの勢力抗争が激化し、1323年の「パヒキナサーリの和議」の結果、西カレリア地方がスウェーデン王国の領土内に入り、西方文化圏に編入された。しかし、カレリアの大部分の地域は、ノブゴロド、のちにはロシアとの結び付きを強めていった。ロシア領カレリアの住民は、ラドガ湖北西岸の地(中心地カキサルミKäkisalmi、レニングラード州プリオゼルスク)から、オネガ湖、白海、ラップ地方へと居住地を拡大し、東西両文化とかかわりあいながら、独特の文化、社会をつくりだしていった。
17世紀には、カキサルミ地方がスウェーデンの支配下に入った結果、この地の住民の多くがおもに宗教上の理由からロシア領内に移動した。このあと、カキサルミ地方にはフィンランド側から新教徒が移住した。18世紀にカキサルミ地方は西カレリアとともにロシアに帰属した。1809年のハミナ条約によりカレリア全域がロシアの支配下に入ったが、フィンランド領とロシア領カレリアとの間の境界線は依然存在した。1917年のフィンランド独立に伴い、ロシア領カレリアでもこれに呼応する動きが起きたが、結局ロシア領内にとどまり、23年に自治共和国となった。1939~40年のソビエト・フィンランド戦争の結果、西カレリアを併合してソビエト連邦構成共和国の一つカレロ・フィン共和国となった。第二次世界大戦中はフィンランドに占領されたが、1944年ソ連に返還され、56年には自治共和国、90年の主権宣言後、91年ふたたび共和国となった。
[萩谷千枝子]
ロシア連邦北西端のカレリア共和国およびフィンランド東部のカレリア県を中心に居住する民族。居住地は大部分が針葉樹林に覆われ、湿地も広く分布している。カレリア人はフィン人、エストニア人などとともに、ウラル語族のフィン・ウゴル語派に属し、カレリア語を話す。総人口は約30万で、ロシア連邦のカレリア共和国内に約8万(1995)が住む。歴史は古く2000年以上に達するが、7世紀ごろ現在のカレリアであるラドガ湖周辺に定着し、以来狩猟と漁労をおもな生業としてきた。カレリア地方は、北ヨーロッパの対立する二つの勢力、東のロシアと西のフィンランドおよびスウェーデンの衝突点であったため、長い歴史を通じて国際紛争が絶えず、侵略と征服とが繰り返されてきた。宗教はロシア正教だが、アニミズムの影響も根強く、結婚式や葬儀には長くて念入りな儀礼が伴う。伝統的に家父長の権限の強い大家族制をとっており、工業化をあまり好まず、現在でも狩猟や漁労、林業、農業などで生計をたてている。口頭で歌い継がれてきたフィンランドの民族叙事詩『カレバラ』(カレワラともいう)には、フィン人と同様にカレリア人の歴史や、かつての生活様式が詳しく語られている。
[片多 順]
出典 株式会社平凡社百科事典マイペディアについて 情報
白海の西,フィンランドの東にあり,北をムルマンスク州,南をレニングラード州に囲まれたロシア連邦内自治共和国。カレリア人が居住している。首都ペトロザヴォーツク。1940~56年はカレロフィン共和国と称していた。
出典 山川出版社「山川 世界史小辞典 改訂新版」山川 世界史小辞典 改訂新版について 情報
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