ツルニンジン(読み)つるにんじん

改訂新版 世界大百科事典 「ツルニンジン」の意味・わかりやすい解説

ツルニンジン (蔓人参)
Codonopsis lanceolata(Sieb.et Zucc.) Trautv.

キキョウ科白色の乳液を有する多年草。根がチョウセンニンジンに似ていて,茎がつるになるのでこの名があり,チョウセンニンジン代用に使われたこともある。バアソブに対し,ジイソブともよばれる。ソブとはそばかすのことで,花冠内面斑点をたとえたものである。日本全国をはじめ,東アジアに広く分布している。葉は楕円形で長さ3~10cm,裏面は白色をおび,枝先に4個ずつ固まってつく。花は葉間から1個ずつ生じ,ぶら下がる。花冠は鐘形で長さ3~3.5cm,先は5浅裂して反転し,内面に紫褐色の斑点がある。子房は半下位で,蒴果(さくか)を結ぶ。花期は8~10月。朝鮮では太いゴボウ状の根をドドクとよんで,浸し物や煮物で食べる。薬用にもなる。バアソブC.ussuriensis(Rupr.et Maxm.) Hemsl.は,これより花が小さく,葉の両面に毛がある。ツルニンジンと同じように食用にされる。

 ツルニンジン属Codonopsisは東アジアに40種ほどあり,日本には上記の2種が自生している。一部の種が岩石園や花壇に栽植される。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「ツルニンジン」の意味・わかりやすい解説

ツルニンジン
つるにんじん / 蔓人参
[学] Codonopsis lanceolata (Sieb. et Zucc.) Trautv.

キキョウ科(APG分類:キキョウ科)の多年生つる草。塊根は紡錘形。全草に香りがあり、茎を折ると白い液が出る。葉は茎の側枝に4枚集まってつき長楕円(ちょうだえん)形から狭卵形、毛はない。8~10月、側枝の先に鐘形の花を1個下向きに開く。花冠は外面淡緑色、内面には紫褐色の斑紋(はんもん)がある。丘陵帯から山地帯の林内や林縁に生え、北海道から九州、および朝鮮半島、中国、ウスリーに分布する。名は、根がニンジンに似ており、つる性であることによる。別にジイソブ(爺蕎)の名があるが、これは花冠の紫斑(しはん)を老婆のそばかすに見立てたバアソブに対し、本種がこれによく似ていてより大形であることによる。ツルニンジン属はつる草で柱頭は3~5裂し、裂片の幅は広い。アジアに約45種、日本に3種が分布する。

[高橋秀男 2021年10月20日]


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百科事典マイペディア 「ツルニンジン」の意味・わかりやすい解説

ツルニンジン

ジイソブとも。北海道〜九州,東アジアの林内などにはえるキキョウ科の多年生つる草。根茎は肥大し,茎は長さ2mに達し,切ると白汁が出る。葉は枝先に4枚ずつつき,楕円形で薄くて毛がない。8〜10月,側枝の先に短い花柄を出し広鐘形の花をつける。花冠は長さ3cm内外,浅く5裂し,緑白色,内面には褐紫色の斑点がある。根茎はチョウセンニンジンの代用にされたこともある。よく似たバアソブは花がやや小型で,色が濃く,葉裏には白毛が密生する。

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